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第六章、金色の庭を越えて。
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清志郎はようやく、すべてを取り戻した。
踏みしめているステージの感触、観客の声、臨場感。蘇った良心と罪悪感は、鮮やかに彼の胸を切り裂いた。しかしその痛みこそが、生きている証だった。
清志郎が見ていたのは、あゆらだった。
舞台の裏から勇ましく歩み寄る彼女。
危険を顧みず、正義を貫こうとするあゆらに、清志郎は母を重ねていたのだ。
清志郎はあゆらを好きだった。
ねじれきった心では、志鬼のように素直に愛情表現をすることはできなかったが、あゆらの意思の強い瞳に、他とは違う何かを感じていたのだ。
あゆらと志鬼は、清志郎の一歩手前で立ち止まった。
するとその後ろからやって来た警官の一人が、清志郎の側に行き、声をかけた。
「帝清志郎くん、萩原美鈴さん殺害と、余罪の件で署までご同行――」
警官が言葉を切ると同時に、あゆらと志鬼も、目を見張った。
清志郎は泣いていた。
言葉では現せない思いが、浄化の雨となり静かに頬を伝った。
「はい、僕がやりました。萩原美鈴さんを、殺しました」
会場中が、どよめいた。
清志郎の自供に、あゆらは耳を疑い、美鈴との日々が走馬灯のように脳内を駆け巡った。
あゆらは手を握りしめ、歯を食いしばった。
踏みしめているステージの感触、観客の声、臨場感。蘇った良心と罪悪感は、鮮やかに彼の胸を切り裂いた。しかしその痛みこそが、生きている証だった。
清志郎が見ていたのは、あゆらだった。
舞台の裏から勇ましく歩み寄る彼女。
危険を顧みず、正義を貫こうとするあゆらに、清志郎は母を重ねていたのだ。
清志郎はあゆらを好きだった。
ねじれきった心では、志鬼のように素直に愛情表現をすることはできなかったが、あゆらの意思の強い瞳に、他とは違う何かを感じていたのだ。
あゆらと志鬼は、清志郎の一歩手前で立ち止まった。
するとその後ろからやって来た警官の一人が、清志郎の側に行き、声をかけた。
「帝清志郎くん、萩原美鈴さん殺害と、余罪の件で署までご同行――」
警官が言葉を切ると同時に、あゆらと志鬼も、目を見張った。
清志郎は泣いていた。
言葉では現せない思いが、浄化の雨となり静かに頬を伝った。
「はい、僕がやりました。萩原美鈴さんを、殺しました」
会場中が、どよめいた。
清志郎の自供に、あゆらは耳を疑い、美鈴との日々が走馬灯のように脳内を駆け巡った。
あゆらは手を握りしめ、歯を食いしばった。
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