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第六章、金色の庭を越えて。
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清志郎は聡明だった。
それ故に、大人に逆らわなかった。
子供が巨悪に立ち向かったところで、捻り潰されるのは目に見えている。
ならば黙って、染まってしまった方が楽に決まっている。
だからあきらめた。
自分に流れる血にも、抵抗しなかった。
「仕方ないよ、僕がこうなったのは、あの人のせいなんだから、僕が悪いんじゃない……」
唯一いけないことをダメだと叱ってくれる母はもういない。
清志郎が美鈴を殺めたのは、彼女が羨ましかったからだ。
彼に自覚はなかったが、どれだけ汚れても希望を捨てない、美鈴の瞳が気に入らなかった。そして怖かった。
自分はこんなに汚れてしまったのに、なぜきみはそんなに綺麗でいられるの、と。
脅すためだけに持っていたメスは、気づけば凶器となり美鈴の首を切り裂いていた。
惨状の中、清志郎は異様なほど冷静に、掃除道具の入ったロッカーから雑巾を出し、体育倉庫の床についた血飛沫を拭き取ると、メスと一緒に焼却炉で燃やした。
あっけない証拠隠滅だった。
しかし美鈴の抵抗を見せる瞳は、僅かに清志郎の心に傷を作った。
そんな中、ついに自身の危険を顧みず、清志郎……そしてその背景に反り立つ大壁に勝負を挑む二人が現れた。
あゆらと志鬼である。
無遠慮に自分の中に踏み込んでくる彼らを見て、清志郎は忘れた何かを思い出しそうになった。
『誰か……僕を止めてくれ』
感じなくなった心が、再び痛みを持ち始めたのだ。
臆病に突き放した意識と人格が、繋がろうとしていた。
それ故に、大人に逆らわなかった。
子供が巨悪に立ち向かったところで、捻り潰されるのは目に見えている。
ならば黙って、染まってしまった方が楽に決まっている。
だからあきらめた。
自分に流れる血にも、抵抗しなかった。
「仕方ないよ、僕がこうなったのは、あの人のせいなんだから、僕が悪いんじゃない……」
唯一いけないことをダメだと叱ってくれる母はもういない。
清志郎が美鈴を殺めたのは、彼女が羨ましかったからだ。
彼に自覚はなかったが、どれだけ汚れても希望を捨てない、美鈴の瞳が気に入らなかった。そして怖かった。
自分はこんなに汚れてしまったのに、なぜきみはそんなに綺麗でいられるの、と。
脅すためだけに持っていたメスは、気づけば凶器となり美鈴の首を切り裂いていた。
惨状の中、清志郎は異様なほど冷静に、掃除道具の入ったロッカーから雑巾を出し、体育倉庫の床についた血飛沫を拭き取ると、メスと一緒に焼却炉で燃やした。
あっけない証拠隠滅だった。
しかし美鈴の抵抗を見せる瞳は、僅かに清志郎の心に傷を作った。
そんな中、ついに自身の危険を顧みず、清志郎……そしてその背景に反り立つ大壁に勝負を挑む二人が現れた。
あゆらと志鬼である。
無遠慮に自分の中に踏み込んでくる彼らを見て、清志郎は忘れた何かを思い出しそうになった。
『誰か……僕を止めてくれ』
感じなくなった心が、再び痛みを持ち始めたのだ。
臆病に突き放した意識と人格が、繋がろうとしていた。
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