金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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「なんちゅう危険なことするんや、あゆらに何かあったら……」
「志鬼に相談したら絶対に止められると思ったから、内緒でしちゃったわ。でもやっぱり、志鬼にだけリスクを背負わせて、自分だけ何もしないのは性に合わなかったのよ、ごめんなさい」

 悪びれる様子もなく勝ち気に微笑んで見せるあゆらに、志鬼は参ったと言わんばかりに息を吐きながら困ったように笑った。

「恐れ入ったわ。……すごいな、あゆらは、人一倍感受性も豊かで傷つきやすいのに、それでも立ち止まらずに、突き進んで行くんやもんなあ……」

 弱く、脆い一面を抱えながらも、強くあろうとするあゆらを前にして、志鬼はある決心をした。
 恋焦がれる少女が、ここまでの心意気を見せたのだ。男である自分がぶれるわけには行かない、と。

「何言ってるのよ、みんな志鬼のおかげよ」
「俺は、そんなに大したことは……」
「ねえ、志鬼」
「うん?」
「今日、帰りたくないわ」
「……やろうな」

 突然の雨に焦って走る人々が行き交う中、あゆらと志鬼は二人だけの世界にいるような錯覚に陥っていた。

「あ、じゃ、じゃあ俺の家泊まるー? なんつって」
「ええ」
「……へ?」
「そうするわ」

 冗談半分の誘いに即答したあゆらに、志鬼の方がピタリと動きを止めた。
 確かに昨日も泊まりはしたが、今夜はまったく状況が違う。

「……あゆら、俺、今、体調万全なんやけど」
「知ってるわよ、ド平熱なんでしょう」
「俺めちゃくちゃ男なんやけど」
「男の中の男だと思うわ」
「……それでも、来るん?」
「ええ。……何よその顔。別に自暴自棄になってるわけじゃないわよ。私今、意外と冷静だから」

 吹っ切れたように清々しい面持ちで言うあゆらに対し、志鬼は動悸を感じながら生唾を飲み込んだ。
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