金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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「ぎゃははは! あいつら志鬼兄貴にびびって逃げてやんの、ざまあ――アダッ!?」
「騒ぎでかくしてどないするねん、頭使えアホ」
「す、すんません!」

 出入り口を指差して爆笑する虎徹の頭に、志鬼の鉄拳が炸裂した。
 
 ――子虎がライオンに叱られているわ。

 極道系男子二人のやり取りを背後で傍観していたあゆらは、そんなことを思いながら足を進めた。

「ありがとう、志鬼、どうしたらいいかわからなくて、困っていたのよ。私には何もできなかったわ」
「いやいや、か弱い女の子は危ないから何もせんのが正解や。こんな役はできる奴が引き受けたらええだけやし」

 あゆらの心臓がドキリと大きな音を立てる。
 決して力を自慢することなく、問題を鎮めた巧みな状況判断。そしてその行動にともなった台詞に、男を感じずにはいられなかった。
 つい数時間前、自分に寄りかかり甘えていた少年だとは思えない逞しさに、あゆらは虎徹が言っていた無自覚人たらしの意味をよくよく理解した。

「あ、あなたって人は、本当に……」
「どうしたんあゆら、顔赤いで?」
「あ、あの、ありがとうございました、とても助かりました」

 気づけば周りには店主を筆頭に従業員が集まっており、志鬼に感謝を伝えていた。

「お礼にお食事代はいただきませんので、遠慮なく食べて行ってください」
「いや、それはあかんやろ、そういうことはちゃんとせな」

 だがしかし、志鬼の財布には残り二百三十円しか入っていなかった。
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