金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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「きっと、照れ隠しもあるんじゃないかしら」
「俺もそう思うっす! もしかして姉貴も助けられて惚れたクチっすか?」
「えっ!? そ、そんな単純なことじゃ……」

 と、口籠もりながら言ってみても、確かにきっかけはそうであったし、今考えてみれば一目惚れだったのかもしれない、とあゆらは思った。

「やっぱり? めっちゃわかるっすよその気持ち、痺れるっすよね、あの人おらんかったら俺たぶん今頃死んでるし、だから俺にとって志鬼兄貴はヒーローなんす、柄悪くてアホなことも一緒にしてくれる最高のヒーローっすよ」

 へへ、と笑いながら憧れの人のことを話す虎徹は本当に楽しげで、そんな彼を見たあゆらも気分が高揚した。
 なぜならあゆらは今まで志鬼のよさを語りたくても語る相手がいなかったからだ。
 初めて共感してくれる虎徹に嬉しくなったあゆらも前のめりになり、夢中で相槌を打った。

「ええ、ええ、わかるわよ、志鬼はかっこいいと思うわ」
「そうっすよね! 志鬼兄貴は自分のこと女ウケ悪いと思ってるみたいやけど、家が男だらけな上に男子校やったから出会いなかっただけで、絶対女にも好かれる思てたんすよ!」
「その通りよ、人を惹きつける魅力に性別は関係ないと思うわ」
「あの人天然の人たらしっすからね、あの時なんかああで、こうで」
「ええっ、すごいわ、もっと聞かせてちょうだい」

 ……と、そんな二人の後ろの壁に張りついたまま動けないヤンキーが一人。
 
 ――あゆらまで一緒になって何言うてるねん……恥ずっ!

 自分の話題だけで朝まで語り明かしそうな恋人と弟分に、お手洗いに行っていた志鬼は完全に戻るタイミングを失っていた。
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