金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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 十六年前の八月、志鬼は野間口組のおさである男を父に、この世に生を受けた。
 生まれつき髪が黄金色をしており、一体どこの外国人との不義があったのかと議論を呼んだが、詳しく調べてみれば母親の曽祖母がロシア人だということが判明した。
 とはいえ白人の血などないに等しく、健康的な肌色から顔の作りまで純日本人な志鬼は、髪を染めているようにしか見えなかった。
 しかし志鬼の恵まれた体格を考えれば、異国人の先祖返りと言われても納得する部分もあった。

 志鬼の下には弟や妹が何人もいる。
 正妻の子もいれば愛人である腹違いの子もいたが、どれも関係は希薄で名前すらろくに出てこないくらいだ。
 顔すら見たことがない者もいれば、一緒に住んでいた者もいたが、それでも広い敷地内にいて稀にすれ違う程度で共同生活をしている組員となんら変わりなかった。
 ――いや、むしろ騰や虎徹といった兄貴分や弟分の方がよほど親しかった。
 志鬼が血縁関係を重んじていないのはそのためだ。

 子育てとは一種のマインドコントロールである。
 小さな場所に閉じ込め、親しか知らなければ、それがその子の世界になり、何も疑う余地はない。
 志鬼も幼い頃は親は偉大だと思い込み、後継あとつぎの鍛錬に励んでいた。
 武道、知能、決断力、人徳……次々に指導者としての頭角を現す志鬼に、父親は大いなる期待を寄せた。
 組長は何も世襲制や長男にこだわっているわけではない。
 たまたま、ふさわしい男が自分の長男だったというだけだ。
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