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第五章、真実と情熱
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「ええ!? てことは俺、あゆらのこと泊まらせてもたやん!? 不良やん! 家大丈夫なん!? 親父はともかくお母さんとか」
「つべこべ言わずに熱を測りなさい、ほら!」
「は、はい」
志鬼はあゆらに言われるがまま検温すると、結果は36.7度まで下がっていた。
「すごい回復力ね」
「俺子供体温やからそれでド平熱やで」
「あら、そうなの? どうりでいつも温かいわけね。しかし本当に風邪だったのかしら」
「全然どこも痛くないし、マジで知恵熱やったりして、恥ず!」
「恥ずかしくはないでしょう、それだけがんばってくれたということよ……ありがとうね、志鬼」
そう言ってあゆらが額に軽く唇をつけるものだから、志鬼はまだ夢を見ているようだった。
――な、なんか距離が近い、また熱出そうや。
志鬼が天にも昇る気持ちでいると、あゆらは立ち上がって玄関のすぐ横にある窓に向かった。
「そうそう、家のことなら大丈夫だから、連絡しておいたし、お母様は志鬼を悪く思っていないわ」
「そ、そう? ならええけど」
「換気するから窓を開けるわよ」
そう言ってあゆらがキッチンの上についた小窓を開いた時だった。
「――キャアアアーッ!!」
突然の悲鳴に飛び起きた志鬼が急いであゆらの元に駆け寄った。
あゆらは青い顔で腰を抜かし、後退りしながら窓を指差している。
「どうしたあゆら!? Gが出たか!?」
「ち、違うわ! ち……」
「ち?」
「チンピラよ、チンピラの霊が……!」
「チンピラの霊って……」
嫌な予感しかしない志鬼が小窓を見てみると、そこには茶色の短髪にピアスだらけの耳をした小僧がいた。
――ピシャッ!
目が合った瞬間、志鬼は窓を閉めた。
「つべこべ言わずに熱を測りなさい、ほら!」
「は、はい」
志鬼はあゆらに言われるがまま検温すると、結果は36.7度まで下がっていた。
「すごい回復力ね」
「俺子供体温やからそれでド平熱やで」
「あら、そうなの? どうりでいつも温かいわけね。しかし本当に風邪だったのかしら」
「全然どこも痛くないし、マジで知恵熱やったりして、恥ず!」
「恥ずかしくはないでしょう、それだけがんばってくれたということよ……ありがとうね、志鬼」
そう言ってあゆらが額に軽く唇をつけるものだから、志鬼はまだ夢を見ているようだった。
――な、なんか距離が近い、また熱出そうや。
志鬼が天にも昇る気持ちでいると、あゆらは立ち上がって玄関のすぐ横にある窓に向かった。
「そうそう、家のことなら大丈夫だから、連絡しておいたし、お母様は志鬼を悪く思っていないわ」
「そ、そう? ならええけど」
「換気するから窓を開けるわよ」
そう言ってあゆらがキッチンの上についた小窓を開いた時だった。
「――キャアアアーッ!!」
突然の悲鳴に飛び起きた志鬼が急いであゆらの元に駆け寄った。
あゆらは青い顔で腰を抜かし、後退りしながら窓を指差している。
「どうしたあゆら!? Gが出たか!?」
「ち、違うわ! ち……」
「ち?」
「チンピラよ、チンピラの霊が……!」
「チンピラの霊って……」
嫌な予感しかしない志鬼が小窓を見てみると、そこには茶色の短髪にピアスだらけの耳をした小僧がいた。
――ピシャッ!
目が合った瞬間、志鬼は窓を閉めた。
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