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第五章、真実と情熱
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「お母様、ありがとうございます。志鬼に断りを入れてからすべてお話します。それまでにどうか心の準備をなさって。私は大丈夫です、では……」
そう言ってあゆらは母との通信を切ると、壁を背もたれに一つ小さな息をついた。
すると、先ほどまで夕飯に鮭茶漬けを食べていたアキが、あゆらの足に擦り寄って来た。
あゆらはアキの両脇を持って抱き上げると、頭を撫で志鬼の枕元に戻った。
「ごめんなさいね、あなたのご主人様をこき使ってしまって……」
あゆらは正座をした膝にアキを乗せると、洗面器に置いたタオルで志鬼の額に浮かぶ汗を拭った。
こんな時でも輝きを失わないススキのような金色の髪。その結び目を解いた志鬼を、まさかこんな形で初めて見ようとは。
「う……ん」
「志鬼? 大丈夫?」
もぞもぞと寝返りを打ちながら、苦しげに眉間に皺を寄せる志鬼に、あゆらはどこか痛いのだろうかと心配して顔を寄せた。
「あ、ゆ……おれ、まも……」
目を閉じたまま、途切れ途切れに発された言葉に、あゆらは動きを止めた。
「……夢の中まで私を守ってくれてるの、バカね……」
子供のような寝顔とあきれるほどの一途さに、あゆらは目頭が熱くなるのを感じた。
そう言ってあゆらは母との通信を切ると、壁を背もたれに一つ小さな息をついた。
すると、先ほどまで夕飯に鮭茶漬けを食べていたアキが、あゆらの足に擦り寄って来た。
あゆらはアキの両脇を持って抱き上げると、頭を撫で志鬼の枕元に戻った。
「ごめんなさいね、あなたのご主人様をこき使ってしまって……」
あゆらは正座をした膝にアキを乗せると、洗面器に置いたタオルで志鬼の額に浮かぶ汗を拭った。
こんな時でも輝きを失わないススキのような金色の髪。その結び目を解いた志鬼を、まさかこんな形で初めて見ようとは。
「う……ん」
「志鬼? 大丈夫?」
もぞもぞと寝返りを打ちながら、苦しげに眉間に皺を寄せる志鬼に、あゆらはどこか痛いのだろうかと心配して顔を寄せた。
「あ、ゆ……おれ、まも……」
目を閉じたまま、途切れ途切れに発された言葉に、あゆらは動きを止めた。
「……夢の中まで私を守ってくれてるの、バカね……」
子供のような寝顔とあきれるほどの一途さに、あゆらは目頭が熱くなるのを感じた。
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