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第五章、真実と情熱
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「志鬼がひどい熱で寝込んでいるの。これは私のせいよ、私のために、毎日必死に動いていたからなの。なのに、そんな彼を一人放って帰るなんてできないわ……理由は」
あゆらはもう、父のことも含め、全部母に吐き出してしまおうかと思った。
しかし、そんな空気を読み取ったかのように、杏奈は言った。
『……美鈴ちゃんの事件のことね?』
「――え……?」
思いもよらない母からの言葉に、あゆらは大きな目をさらに見開いた。
『つい先日ね、鈴子さんから聞いたのよ。あゆらが家に来て、色々調べてくれているようだって。私に言わないという約束だったそうだけど、あなたが変なことに首を突っ込んで危険な目に遭わないか、心配した鈴子さんが悩んだ挙句私に話してくれたの。美鈴ちゃんが自殺でないことも、聞いたわ。あなたに協力してくれている人がいることも……それが、志鬼くんなのでしょう?』
そこまで杏奈が知っていることを教えられたあゆらは、少し間を開けたのち、微かな期待を込めて言った。
「……お母様に、お父様を捨てる覚悟はおありですか? “岸本幸蔵の妻”である肩書きとともに」
電話口で杏奈は、いつの間にかこんなに成長し、自己主張するようになった我が子に驚きながら答えた。
『そんなものは最初から求めていないわ。あゆら、あなたさえいいのなら、母はなんだって協力します』
杏奈のその迷いない返事に、あゆらは決心を固めつつあった。
あゆらはもう、父のことも含め、全部母に吐き出してしまおうかと思った。
しかし、そんな空気を読み取ったかのように、杏奈は言った。
『……美鈴ちゃんの事件のことね?』
「――え……?」
思いもよらない母からの言葉に、あゆらは大きな目をさらに見開いた。
『つい先日ね、鈴子さんから聞いたのよ。あゆらが家に来て、色々調べてくれているようだって。私に言わないという約束だったそうだけど、あなたが変なことに首を突っ込んで危険な目に遭わないか、心配した鈴子さんが悩んだ挙句私に話してくれたの。美鈴ちゃんが自殺でないことも、聞いたわ。あなたに協力してくれている人がいることも……それが、志鬼くんなのでしょう?』
そこまで杏奈が知っていることを教えられたあゆらは、少し間を開けたのち、微かな期待を込めて言った。
「……お母様に、お父様を捨てる覚悟はおありですか? “岸本幸蔵の妻”である肩書きとともに」
電話口で杏奈は、いつの間にかこんなに成長し、自己主張するようになった我が子に驚きながら答えた。
『そんなものは最初から求めていないわ。あゆら、あなたさえいいのなら、母はなんだって協力します』
杏奈のその迷いない返事に、あゆらは決心を固めつつあった。
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