金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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「……帝からの被害を証言してくれる子と連絡が取れたんや。美鈴ちゃんが庇った友達で、引っ越したのは本人の意思やない。岸本幸蔵と帝が話してる内容をたまたま聞いて、口止めに遠ざけられたんや。『私が元締めであることはくれぐれも口外しないように』と」

 志鬼は和美から、その内容のすべてを聞いていた。
 幸蔵から、関わらないのを約束に売春からも足を洗わせると。もしそれを破ったなら、和美の家族にも何をするかわからないと脅迫めいたことも言われていた。
 
「……もう、わかるよな、帝が言うてたことの意味」

 清志郎の罪を暴くことは、幸蔵の罪を暴くこと。しかもただの客ではない。最も重罪である、指示する側の総元締めである。
 そして父が犯罪者になれば、娘であるあゆらは犯罪者の娘というレッテルが貼られることになる。
 永遠に逃れることのできない、呪われた血との戦いが始まるのだ。
 故に清志郎には余裕があった。
 あゆらが事件の真相を世間に明らかにするわけがない、と。
 黙っていれば今までと変わらない、裕福で何不自由ない生活ができるのだ。わざわざ実の父親を警察に突き出し、晒し者になるような自殺行為はしないだろう、と。

 あゆらはしばし、ただ茫然と立ち尽くしていた。
 ――あの父が、あれほどまでに威厳をかざし、思うがままに自分や母を支配してきた父が、少女たちの身体を餌に、それで得た金で私腹しふくをこやしていたのだ。
 親友である美鈴が穢された卑劣なステージを、あの男が用意したのだ。
 外では虫も殺さぬ顔をして、国のため、人のためと演説しているあの男が――。
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