金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
171 / 228
第五章、真実と情熱

19

しおりを挟む
 あゆらが志鬼の身体から下りると、パチパチ……と人を小バカにしたような拍手が聞こえた。
 もちろん、しているのは彼しかしない。

「いやあ、すごいね、あゆらさんは立派な猛獣使いだ。僕が怪我をして野間口くんに少年院にでも入ってもらえば二人を引き裂けると思ったんだけどね、失敗失敗……で、そこの猛獣くんは、この事件の真髄まで辿り着いたのかな?」

 清志郎が手を叩くのをやめ、志鬼を見据える。すると志鬼はそれに返すように、苦々しい顔をした。

「わあ、その反応はもうすべてを知っているね! いくら極道の息子だからって、親の力がなければただの子供なのに、よくそこまで調べられたものだね、褒めてあげるよ」

 あゆらにはなんのことかわからない。
 突然蚊帳の外に弾かれたような感覚に、あゆらは困惑し、志鬼と清志郎の顔を交互に見た。

「……黙れ」
「僕から教えてあげようか、あゆらさん、きみと僕はある意味一連托生で、幸蔵さんは」
「黙れ言うてるやろ! 俺から話すからお前は引っ込め!!」

 珍しく声を荒げる志鬼に、あゆらは事の重大さを悟った。
 清志郎はあきれたように苦笑いをすると、机に用意してあった教科書を手にした。

「じゃあ僕はそろそろ行くよ、体調が悪いと言って授業に遅れると言ってあるからね。そうそう、もうすぐバイオリンのコンテストも近いんだ、ぜひ観に来てね、あゆらさん」

 清志郎は淡々と話すと、何事もなかったかのように部屋を出て行った。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不本意な転生 ~自由で快適な生活を目指します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,782pt お気に入り:3,699

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:17,398pt お気に入り:12,698

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:15,024pt お気に入り:2,083

どうやら私は竜騎士様の運命の番みたいです!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:6,588

処理中です...