金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

14

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 ――つまり、自分のように価値が高い人間のストレス解消に、価値が低い人間が使われるのは当たり前だ、ということだろうか。
 あゆらは脳内で要約された自己中心極まりない発言に、しばし言葉を失い、歯を食いしばっていた。
 そして思ったのだ。
 もはやこれは美鈴だけの問題ではない。
 これから先、この男の犠牲者となる弱き者たちを救うためにも、絶対にここで止めなくてはならない、と。

「……名はたいを表す、と言うけれど、あんなのは嘘っぱちね。あなたの名に志鬼と同じ“志す”という漢字が入っているだなんて笑わせるわ」
「僕の名前は清志郎、清い道を志すという意味で清志郎だ。何もおかしくはないよ」
「あなたってかわいそうだわ、悲しいことを悲しいと思えない、怖いことを怖いと思えない……どうかしている、そんなので生きていて楽しいの?」
「ひどい口ぶりだなあ、あの品性の欠片もない輩の影響かな」
「そうかもしれないわね、それだけ志鬼が好きだもの、どうしようもなく惹かれるの」

 清志郎の左目が痙攣するような動きを見せる。
 
「どうしてわかってくれないの、こんなに僕はきみを思っているのに」

 清志郎の声色が変わると同時に、あゆらを押さえる腕に力が込められる。
 ――本当に、このままメスを突き立てられるかもしれない。
 呼吸が浅くなり、背筋に冷たい汗が流れる。
 命の危機を感じたあゆらは、恐怖のあまり目を強く瞑った。

 その時、勢いよく背後のドアが開かれた。
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