161 / 228
第五章、真実と情熱
9
しおりを挟む
「叩けば埃が出そうな相手ではあるな。……だが、わざわざ俺が調べなくても、それはとっくに真実を知ってる顔だよなあ?」
志鬼を監視していた騰は、当然彼が深夜に動いていることを知っていた。故に今の発言がそれに関係しているのだろうと予測できた。
しかしあえてそこには触れなかった。
助けを求めているわけではないとわかっていたからだ。
「よくガキだけでそこまで辿り着けたもんだ。答えももう出たんだろう? なら迷うなよ、らしくねえ」
「……俺のことじゃないんや」
「そこまで悩むならよほど大事な人間なんだろう。なら尚更、お前が選んだ答えをくれてやれよ。腹括れや、俯いてたら男がすたるぜ」
ぶっきらぼうな後押しに、志鬼は笑ったのを隠すように顔を逸らすと、騰を横切った。
「今時世襲制なんてナンセンスだ、俺がお前の親父にとって代わってやるからよ、安心して我が道を行きやがれ」
背後からかかった言葉に、志鬼は右手をひらひらと振りその場を後にした。
「……あ、虎徹の奴に住所教えちまったの言い忘れた。まあいいか。……それにしてもあいつ、面が赤く見えたが、気のせいか?」
久しぶりの再会につい話し込み、いろいろ言うことや突っ込むところが抜けてしまった騰だったが、遠くなる成長した背中を見送ると、幾分か安心したように車に戻った。
志鬼を監視していた騰は、当然彼が深夜に動いていることを知っていた。故に今の発言がそれに関係しているのだろうと予測できた。
しかしあえてそこには触れなかった。
助けを求めているわけではないとわかっていたからだ。
「よくガキだけでそこまで辿り着けたもんだ。答えももう出たんだろう? なら迷うなよ、らしくねえ」
「……俺のことじゃないんや」
「そこまで悩むならよほど大事な人間なんだろう。なら尚更、お前が選んだ答えをくれてやれよ。腹括れや、俯いてたら男がすたるぜ」
ぶっきらぼうな後押しに、志鬼は笑ったのを隠すように顔を逸らすと、騰を横切った。
「今時世襲制なんてナンセンスだ、俺がお前の親父にとって代わってやるからよ、安心して我が道を行きやがれ」
背後からかかった言葉に、志鬼は右手をひらひらと振りその場を後にした。
「……あ、虎徹の奴に住所教えちまったの言い忘れた。まあいいか。……それにしてもあいつ、面が赤く見えたが、気のせいか?」
久しぶりの再会につい話し込み、いろいろ言うことや突っ込むところが抜けてしまった騰だったが、遠くなる成長した背中を見送ると、幾分か安心したように車に戻った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
8年間未来人石原くん。
七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。
「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」
と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず)
これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

人魚のカケラ
初瀬 叶
青春
あの娘は俺に言ったんだ
『もし私がいなくなっても、君は……君だけには覚えていて欲しいな』
父親と母親が離婚するらしい。
俺は父親、弟は母親が引き取るんだと。……俺等の気持ちなんてのは無視だ。
そんな中、弟が入院した。母親はまだ小学生の弟にかかりきり、父親は仕事で海外出張。
父親に『ばあちゃんの所に行け』と命令された俺は田舎の町で一ヶ月を過ごす事になる。
俺はあの夏を忘れる事はないだろう。君に出会えたあの夏を。
※設定は相変わらずふんわりです。ご了承下さい。
※青春ボカロカップにエントリーしております。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
あの日は、晴れのち曇りの天気予報だった
平木明日香
青春
中学生の頃に両親を亡くし、高校を中退した小鳥遊みかんは、祖母と2人で実家の牧場を切り盛りしていた。
学生生活を捨て、生活のために働くことを決意したみかんだったが、次第に自分の将来について不安を感じるようになってしまう。
そんな折、とあることがきっかけで祖母と喧嘩した彼女は、小学生の頃に別れた幼馴染からの誘いで、上京することを決める。
幼馴染は彼女にとっての初恋の相手であり、もう二度会うことがないと思っていた「夢の中」の人だった。
沖縄に住んでいた彼女にとって、東京という街はそれほどまでに遠い場所だった。
会うためのお金も、時間も、子供だった2人にとっては、あまりにもぶ厚い「距離」だったのだ。
上京後、彼の紹介で大学の寮に上がり込んだ彼女は、幼馴染の夢である「カメラマン」の仕事のモデルになるため、ありのままの自分を探す日々を送る。
今を生きる人を撮りたい。
彼にそう言われ、将来の自分についてを考える日々が始まった。
未来のこと、やりたい仕事。
生きるべくして高校を中退した彼女だったが、「生きる」ということがどういうことかを、いつからか見失っていた。
上京して5年。
彼女の元に連絡が入る。
祖母が入院したという、親戚からの電話だった。

読書のすすめ
たかまちゆう
青春
図書委員である宮本さんのところへ、ある日クラスメイトの吉見さんが頼み事をしにきた。
学年一の秀才、羽村君に好かれるため、賢くなれそうな本を教えてほしい、と。
苦手なタイプの子だなと思いつつ、吉見さんの熱意に押されて応援し始める宮本さんだったが――。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる