金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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 騰はシャープな目を細め、余裕の笑みを浮かべながら志鬼を見た。

「組長がお前を名門校に放り込んだのは、お前を見放したわけじゃねえ、むしろ反対だ。光と闇の違いを思い知らせるため、格差に孤独を感じ、自分は裏社会でしか生きることができねえ人間だと泣きべそかいて戻ってくるよう仕向けたかった。唯一思い通りにならねえお前が一番出来がいいもんだからよ、こだわりたくなる気持ちもわかるがな。組長はお前のどこへでもやっていけるバイタリティを甘く見すぎだ。……実際、見つけたんだろう? 居場所を」
 
 タバコを指でもてあそびながら、すべてを悟っているかのように話す騰に、志鬼の眉がピクリと動く。

「ずいぶんお綺麗なお嬢様と仲良くやってるようじゃねえか」
「あゆらに何かしたら……お前でも殺すぞ」

 若頭である騰でさえも、肌が冷えるような研ぎ澄まされた瞳。いつでも真っ直ぐに気持ちをぶつけてくる志鬼は、騰にとっても特別な存在だった。

「するわけねえだろ。自分にはねえ高貴な血に興奮したか?」
「……物珍しさはあったかもしれん。でもそんなんは最初だけや。こんなクソみたいな命でもあってよかったと思わせてくれる気高い女神や」
「それはそれは……どうやら片恋じゃないらしいな。だが惚れた晴れたでまるっと収まる相手じゃねえことはお前もよくわかってんだろう?」

 騰の言う通りである。
 あゆらとの将来を見据えれば見据えるほど、志鬼は生まれながらにして持った“親”という名の呪縛に苦しむのだ。
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