金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第五章、真実と情熱

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「お前がいらねえ動きをしたら、足を撃ってでも連れ帰って来いっつう組長からのお達しだ」

 重厚感のある夜闇色の銃口を見た志鬼は、心底くだらなそうに鼻で笑った。

「そんなんガキの頃から見慣れてるねん、今更怖くもなんともないわ、撃てるもんなら撃ってみろ」

 数秒、睨み合う二人の間に肌を刺すような緊迫した空気が流れた。
 が、それを破壊したのは志鬼だった。

「……と、かっこつけてみたものの、ほんまは死にたくないけど。なぜならまだ童貞やから」

 突拍子のないカミングアウトに、騰の真剣だった表情がじわじわと緩み、ついに堪えきれない笑いが口から吹き出した。

「だーーっはっはっは!! そうか、お前まだだったんだな! 十歳の時筆下ろししてやろうと思って風俗に連れて行ってやったのに、素っ裸で半べそかいて帰って来やがったもんなあ!」
「人のトラウマほじくり返して笑うな! ほんまお前はいらんことばっかりするな!!」

 以前女性経験についてあゆらに話そうとした時、思わず話題を変えたのはこれが原因だった。
 つまり「いらん世話焼く兄貴分」とは、今志鬼の目の前で笑い転げている彼のことである。
 騰は満足いくまで盛大に笑うと、拳銃を胸ポケットに戻し、志鬼に向き直った。

「いやあ、すまねえな……まあ、冗談はここまでだ。鼻からお前を撃つ気なんざねえ。組長のことはうまく誤魔化しといてやるからよ。あいつのやり方は気に食わねえ、そう思って他の組に流れてく奴らも少なくねえからな。まあ、だからこそカリスマ性のあるお前に組を継いでほしくて仕方ねえんだろうよ」
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