158 / 228
第五章、真実と情熱
6
しおりを挟む
「お前がいらねえ動きをしたら、足を撃ってでも連れ帰って来いっつう組長からのお達しだ」
重厚感のある夜闇色の銃口を見た志鬼は、心底くだらなそうに鼻で笑った。
「そんなんガキの頃から見慣れてるねん、今更怖くもなんともないわ、撃てるもんなら撃ってみろ」
数秒、睨み合う二人の間に肌を刺すような緊迫した空気が流れた。
が、それを破壊したのは志鬼だった。
「……と、かっこつけてみたものの、ほんまは死にたくないけど。なぜならまだ童貞やから」
突拍子のないカミングアウトに、騰の真剣だった表情がじわじわと緩み、ついに堪えきれない笑いが口から吹き出した。
「だーーっはっはっは!! そうか、お前まだだったんだな! 十歳の時筆下ろししてやろうと思って風俗に連れて行ってやったのに、素っ裸で半べそかいて帰って来やがったもんなあ!」
「人のトラウマほじくり返して笑うな! ほんまお前はいらんことばっかりするな!!」
以前女性経験についてあゆらに話そうとした時、思わず話題を変えたのはこれが原因だった。
つまり「いらん世話焼く兄貴分」とは、今志鬼の目の前で笑い転げている彼のことである。
騰は満足いくまで盛大に笑うと、拳銃を胸ポケットに戻し、志鬼に向き直った。
「いやあ、すまねえな……まあ、冗談はここまでだ。鼻からお前を撃つ気なんざねえ。組長のことはうまく誤魔化しといてやるからよ。あいつのやり方は気に食わねえ、そう思って他の組に流れてく奴らも少なくねえからな。まあ、だからこそカリスマ性のあるお前に組を継いでほしくて仕方ねえんだろうよ」
重厚感のある夜闇色の銃口を見た志鬼は、心底くだらなそうに鼻で笑った。
「そんなんガキの頃から見慣れてるねん、今更怖くもなんともないわ、撃てるもんなら撃ってみろ」
数秒、睨み合う二人の間に肌を刺すような緊迫した空気が流れた。
が、それを破壊したのは志鬼だった。
「……と、かっこつけてみたものの、ほんまは死にたくないけど。なぜならまだ童貞やから」
突拍子のないカミングアウトに、騰の真剣だった表情がじわじわと緩み、ついに堪えきれない笑いが口から吹き出した。
「だーーっはっはっは!! そうか、お前まだだったんだな! 十歳の時筆下ろししてやろうと思って風俗に連れて行ってやったのに、素っ裸で半べそかいて帰って来やがったもんなあ!」
「人のトラウマほじくり返して笑うな! ほんまお前はいらんことばっかりするな!!」
以前女性経験についてあゆらに話そうとした時、思わず話題を変えたのはこれが原因だった。
つまり「いらん世話焼く兄貴分」とは、今志鬼の目の前で笑い転げている彼のことである。
騰は満足いくまで盛大に笑うと、拳銃を胸ポケットに戻し、志鬼に向き直った。
「いやあ、すまねえな……まあ、冗談はここまでだ。鼻からお前を撃つ気なんざねえ。組長のことはうまく誤魔化しといてやるからよ。あいつのやり方は気に食わねえ、そう思って他の組に流れてく奴らも少なくねえからな。まあ、だからこそカリスマ性のあるお前に組を継いでほしくて仕方ねえんだろうよ」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
アオハルのタクト
碧野葉菜
青春
ピアニストを夢見る拓人の腕は、勝手に音を奏でるようになった。彼女を失ったあの日を境に……。
病に足掻く天才少女と、恵まれているが無能な平凡少年。思い合っているのに結ばれない、切ない青春。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
夫の心がわからない
キムラましゅろう
恋愛
マリー・ルゥにはわからない。
夫の心がわからない。
初夜で意識を失い、当日の記憶も失っている自分を、体調がまだ万全ではないからと別邸に押しとどめる夫の心がわからない。
本邸には昔から側に置く女性と住んでいるらしいのに、マリー・ルゥに愛を告げる夫の心がサッパリわからない。
というかまず、昼夜逆転してしまっている自分の自堕落な(翻訳業のせいだけど)生活リズムを改善したいマリー・ルゥ18歳の春。
※性描写はありませんが、ヒロインが職業柄とポンコツさ故にエチィワードを口にします。
下品が苦手な方はそっ閉じを推奨いたします。
いつもながらのご都合主義、誤字脱字パラダイスでございます。
(許してチョンマゲ←)
小説家になろうさんにも時差投稿します。
想い出と君の狭間で
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
青春
約一年前、当時付き合っていた恋人・久瀬玲華から唐突に別れを告げられた相沢翔。玲華から逃げるように東京から引っ越した彼は、田舎町で怠惰な高校生活を送っていた。
夏のある朝、失踪中の有名モデル・雨宮凛(RIN)と偶然出会った事で、彼の日常は一変する。
凛と仲良くなるにつれて蘇ってくる玲華との想い出、彼女の口から度々出てくる『レイカ』という名前、そして唐突にメディアに現れた芸能人REIKA──捨てたはずの想い出が今と交錯し始めて、再び過去と対峙する。
凛と玲華の狭間で揺れ動く翔の想いは⋯⋯?
高校2年の夏休みの最後、白いワンピースを着た天使と出会ってから「俺」の過去と今が動きだす⋯⋯。元カノと今カノの狭間で苦しむ切な系ラブコメディ。
消えたい僕は、今日も彼女と夢をみる
月都七綺
青春
『はっきりとした意識の中で見る夢』
クラスメイトは、たしかにそう言った。
周囲の期待の圧から解放されたくて、学校の屋上から空を飛びたいと思っている優等生の直江梵(なおえそよぎ)。
担任である日南菫(ひなみすみれ)の死がきっかけで、三ヶ月半前にタイムリープしてしまう。それから不思議な夢を見るようになり、ある少女と出会った。
夢であって、夢でない。
夢の中で現実が起こっている。
彼女は、実在する人なのか。
夢と現実が交差する中、夢と現実の狭間が曖昧になっていく。
『脳と体の意識が別のところにあって、いずれ幻想から戻れなくなる』
夢の世界を通して、梵はなにを得てどんな選択をするのか。
「世界が……壊れていく……」
そして、彼女と出会った意味を知り、すべてがあきらかになる真実が──。
※表紙:蒼崎様のフリーアイコンよりお借りしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる