金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
154 / 228
第五章、真実と情熱

2

しおりを挟む
 かばってもらっておいて、逃げるように転校するなどなんと薄情な。そう思いがちではあるが、もしかしたら何か他に理由があったのかもしれないと、志鬼は視野を広く持ち直した。
 そして、その志鬼の思惑は当たることとなる。
 
 志鬼のたくみな話術と真剣に頼み込む様に、売春クラブにいた少女は和美の連絡先を教えた。
 志鬼はとりあえず一度連絡をした後、すぐにあゆらに相談するつもりだった。
 男性の自分より、女性のあゆらの方が性被害について話すには説得力があり、証言をしてもらえる可能性が高くなると考えたからだ。
 ――だが、事態は思わぬ方向に動くことになる。

 志鬼が電話をかけると、和美は知らない番号からで警戒したのかなかなか出なかった。あきらめずに数回に分けて鳴らすと、ようやく電話口で声がした。
 志鬼はここが勝負どころだと判断し、清志郎が美鈴を殺害したことから今現在に至る経緯をすべて話した。
 すると和美の声が震え、鼻を啜る音が聞こえた。スマートフォン越しでも彼女が悲しみ泣いていることがよく伝わった。

「私が証言します。帝くんがしたこと、知っていること全部、訴えます」

 予想外にも、和美はすぐさま証言をしたいと申し出てくれたのだ。
 軽くコンタクトを取るはずのつもりが、一気に話が進展し、これであゆらにいい報告ができると喜んだ志鬼だったが。その後志鬼は、新たな問題に直面することとなる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

8年間未来人石原くん。

七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。 「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」 と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず) これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

あの音になりたい! 北浜高校吹奏楽部へようこそ!

コウ
青春
またダメ金か、、。 中学で吹奏楽部に挫折した雨宮洸。 もうこれっきりにしようと進学した先は北浜高校。 [絶対に入らない]そう心に誓ったのに そんな時、屋上から音が聞こえてくる。 吹奏楽部で青春and恋愛ドタバタストーリー。

読書のすすめ

たかまちゆう
青春
図書委員である宮本さんのところへ、ある日クラスメイトの吉見さんが頼み事をしにきた。 学年一の秀才、羽村君に好かれるため、賢くなれそうな本を教えてほしい、と。 苦手なタイプの子だなと思いつつ、吉見さんの熱意に押されて応援し始める宮本さんだったが――。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

これからの僕の非日常な生活

喜望の岬
青春
何の変哲もない高校2年生、佐野佑(たすく)。 そんな彼の平凡な生活に終止符を打つかのような出来事が起きる……!

見上げた青に永遠を誓う~王子様はその瞳に甘く残酷な秘密を宿す~

結城ひなた
青春
高校のクラスメートの亜美と怜は、とある事情で恋人のふりをすることになる。 過去のとある経験がトラウマとなり人に対して壁を作ってしまう亜美だったが、真っ直ぐで夢に向かってひたむきに頑張る怜の姿を見て、徐々に惹かれ心を開いていく。 そして、紆余曲折を経てふたりは本当の恋人同士になる。だが、ふたりで出かけた先で交通事故に遭ってしまい、目を覚ますとなにか違和感があって……。 二重どんでん返しありの甘く切ない青春タイムリープストーリー。

処理中です...