金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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「声殺して笑うのやめてくれる。俺めっちゃダサいやん」
「だって、ぷっ、ふ、くく……っ」

 かなり身長差がある二人が立ったまま口づけを成功させるには、それなりの経験が必要だったようだ。つまり、今の動作が志鬼の恋愛経験を物語っていた。

「……だから言うたやろ、引くぐらいないって」

 拗ねたように唇を尖らせながら言う志鬼に、お腹を抱え笑っていたあゆらは再び向き合った。

「引かないわよ、志鬼……私もね、初めてなの、あなたが相手で嬉しいわ」
「ナニソレ、もう可愛いの暴力やん」

 そんなことを言いながら二人は少し笑い合った後、もう一度見つめ合い、また距離を近づけた。
 やがて生まれる温かく柔らかな感触に、ようやく唇が重なったことを知る。
 軽く触れ合うだけで遠のく熱がもどかしく、そして恋しかった。

「俺もう死んでもええわ」
「大袈裟ね、バカ……」

 志鬼の逞しい腕に宝物のように閉じ込められながら、あゆらは「私こそ」と心の中で呟いた。
 
 表面上は最悪な婚約パーティーである今日は、二人にとって最高のファーストキスの日となった。
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