金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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「幸蔵さん、大臣がお呼びですよ」
「……わかった、清志郎くんも一緒にどうだね」
「はい、喜んで、幸蔵さん」

 会場からやって来た杏奈の声がけに、幸蔵は軽く視線をくれると清志郎を連れて去って行った。
 二人の後ろ姿を見送ると、杏奈はあゆらの前に立ち止まり、静かに口を開いた。

「……彼なら、裏庭の方に行ったわよ」

 あゆらは目が覚めるような気持ちで、母の顔を見た。
 その表情はやや弱々しいながらも、慈しみに溢れていた。

「……おかあ、さま……?」

 “彼”というのは、志鬼に違いない。
 杏奈はその居場所を教えてくれたのだ。まるで二人を応援するかのように。
 あゆらはじんと胸が熱くなるのを感じた。
 多くを語らなくとも、母の優しい眼差しがすべてを物語っていた。

「お母様、志鬼は、本当にいい方なのです、私のために身を削って、戦い、守ってくれています、今はまだ、詳しくはお話できませんが……信じてください」
「ええ、志鬼くんを信じる、あゆらを信じるわ……だってあなたは、私のたった一人の娘なんですもの」

 好きでもない幸蔵との間にできた子であっても、杏奈はあゆらのことを愛していた。
 それは親の付属品ではなく、あゆらを一人の人間として見ていた証拠でもあった。
 杏奈は我が子の勇ましい姿に感銘を受け、親である自分が弱くてはならないと覚悟を決めたのだ。
 そしてまだ知らないところで、何か大きなことが動き出している不穏も察していた。

「お母様……感謝いたします……!」

 あゆらは杏奈に頭を下げると、急いで志鬼の後を追った。
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