金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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「あら、どうしたの帝くん、ご自慢の善者の仮面にひずみが見えるわよ」
「あゆら」

 僅かだが望み通りの反応を示した清志郎に、さらなる言葉を浴びせるあゆらだったが、背後からかかった声に肝が冷えた。
 
「お前はどれだけ私の顔に泥を塗れば気が済むんだ」

 幸蔵の強烈な圧に負けじと、あゆらは手に汗を握り辿々しくも反論する。

「……お父様の評価を、下げるようなことはしていない、はずですわ、皆様、ご機嫌ではありませんか」
「ふん、くだらぬ茶番を。清志郎くんを少しは見習ったらどうだ。自分がどういう星のもとに生まれた特別な人間かをよく理解し行動している。きみが私の息子になってくれる日が実に待ち遠しい」
「光栄です、幸蔵さん」

 幸蔵はあゆらを横切り、清志郎の肩を抱き褒め称えた。
 この時あゆらはひどい違和感に襲われた。
 いつ、幸蔵と清志郎はここまで親しくなったのか?
 そもそも親同士が決めた婚約ならばまだしも、子供である清志郎が直々に幸蔵に頼むなど、おかしな話ではないか。明らかに二人には個人的な繋がりがあるとしか思えなかった。
 だとしたら、幸蔵も売春クラブになんらかの関係があるのか、清志郎の犯罪も、知った上で放任している可能性が高いと思った。
 当初、父親だからと微かな期待を込めて、美鈴の件を相談しようとした自身の甘さを諌めた。

 あゆらは直感したのだ。
 もしや最大の敵は、清志郎ではなくこの父親ではないのか、と。
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