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第四章、愛は指先にのせて。
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今更ながらにそんなことを思い出したあゆらだったが、それが事実であったとしても多くの少女を貶め、美鈴の命を奪っていい理由にはならないと同情はしなかった。
しばし二人の間に沈黙が訪れたが、それを破ったのは清志郎だった。
彼は先ほどまでとは打って変わって、また天使のような笑みを浮かべた。
まるで二重人格ではないかと、あゆらの肌が粟立った。
「勘違いしないでほしいんだけど、僕はあゆらさんに敵意なんてないからね。この話を幸蔵さんに持ちかけたのは僕からなんだから」
あゆらは顔を顰めた。
父からの提案だと思っていたのに、まさか清志郎からだったのか、と。
「……あなたなら引く手数多でしょうに、わざわざそんなことをするだなんて、私のことが好きなのかしら?」
「そうだよ。好きだから結婚したいんだ」
嫌味に吐いた台詞を当然のように肯定され、あゆらは開いた口が塞がらなかった。
自分が殺した人間の親友に、一体どの口が言うのか?
憎まれているということが理解できていないのか?
演技か、それとも本気か?
――いずれにせよ、清志郎には“人”として大切な何かが欠落していた。
「だとしたら、私は帝くんに謝らなくてはいけないわ」
「何をだい?」
「私……あなたのことが大嫌いだから結婚はできません」
歯には歯を。こうなれば清志郎よりさらに優しい笑顔を持って、酷なことを口にして見せようと実行したあゆらに、清志郎の精悍な眉がピクリと動いた。
しばし二人の間に沈黙が訪れたが、それを破ったのは清志郎だった。
彼は先ほどまでとは打って変わって、また天使のような笑みを浮かべた。
まるで二重人格ではないかと、あゆらの肌が粟立った。
「勘違いしないでほしいんだけど、僕はあゆらさんに敵意なんてないからね。この話を幸蔵さんに持ちかけたのは僕からなんだから」
あゆらは顔を顰めた。
父からの提案だと思っていたのに、まさか清志郎からだったのか、と。
「……あなたなら引く手数多でしょうに、わざわざそんなことをするだなんて、私のことが好きなのかしら?」
「そうだよ。好きだから結婚したいんだ」
嫌味に吐いた台詞を当然のように肯定され、あゆらは開いた口が塞がらなかった。
自分が殺した人間の親友に、一体どの口が言うのか?
憎まれているということが理解できていないのか?
演技か、それとも本気か?
――いずれにせよ、清志郎には“人”として大切な何かが欠落していた。
「だとしたら、私は帝くんに謝らなくてはいけないわ」
「何をだい?」
「私……あなたのことが大嫌いだから結婚はできません」
歯には歯を。こうなれば清志郎よりさらに優しい笑顔を持って、酷なことを口にして見せようと実行したあゆらに、清志郎の精悍な眉がピクリと動いた。
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