金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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 それを聞いた客たちは、先ほどとは少し違った視線を志鬼に向けた。

「彼は格闘技を一通り会得しておりまして、とっても強いんですのよ。運動神経も抜群です。お勉強は苦手ですが空気を読むのがうまく、人の感情に敏感です。ちょっぴりお下品なところもありますが、まあご愛嬌の範囲ですわ。度を越す時は私が……『めっ!』と言ってたしなめておりますのよ」
「――イッ!?」

 突然の愛ある公開お叱りに、思わず顔を赤くし慌てふためく志鬼。
 そんな志鬼の周りにいた客たちは「さすがあゆらさん」などと少し微笑ましそうに口にした。
 その後あゆらは目に力を込めると、和やかな口調は一転、訴えるものへと変化する。

「どうか家柄や見た目だけではなく、中身で判断していただきたいのです。かく言う私も彼に出会うまでは固定概念に囚われた愚かな一人でありましたが、飾り立てた外見や上辺だけの優しさに騙されるほど滑稽なことはございません。こちらにいらっしゃる聡明な方々には口頭で十分に伝わると信じております」

 あゆらのその迷いなき声は会場全体に響き渡り、客たちの胸を打った。
 志鬼はあゆらから目を離すことができず、駆り立てられる思いを全身で感じていた。

 やがてパチ、パチ、と、まばらだった拍手が重なり、大きなものへと変わる。

「すごいわ、まるで演説を聞いているようでした」
「これは日本初の女性総理大臣も夢ではないかもしれませんな」

 会場内の明るい雰囲気に安心したあゆらは、ホッと胸を撫で下ろした。
 何より志鬼の名誉を回復できた気がして、それが一番嬉しかった。
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