金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
135 / 228
第四章、愛は指先にのせて。

12

しおりを挟む
 ――今朝の母といい、今の彼女たちといい、一体なんなのだ?
 結婚だの、ウエディングドレスだの、そんなことが現実味を帯びてくるのはもっと先の話で、今の自分には関係ない。だけどもし、そんな未来の話をするとしたら、相手は恋を教えてくれた、あの人物しかいないだろう。
 ――そんなあゆらの甘い考えは、次の一幕で打ち砕かれることとなる。

 客が全員揃ったところで、会場の一番奥である、一段高い司会者が立つべき場所。そこに現れたのはあゆらの父の幸蔵だった。

 どうして、お父様が――?

 あゆらの嫌な予感はどんどん濃度を増してゆく。
 誰か、他の人たちに呼ばれたパーティーではないのか。なぜ、主催者が父なのか。
 その疑問はやがて、明らかになる。

「ご機嫌麗しゅう、皆様、足をお運びいただき感謝いたします」 

 幸蔵はマイクを手にし、善人ぶった表の顔で自身に注目する客たちにそう述べた。

「さて、では早速ご紹介いたしましょう。……さあ、近い将来、我が息子となる彼です」

 にこやかな幸蔵がかざした右手には、会場の袖から姿を現した“彼”がいた。

 深みのあるネイビーのジャケットとパンツに、光沢あるシルバーのベスト。磨き上げられた質の高い革靴を美しい姿勢で鳴らしながら、柔らかな髪をした美少年は幸蔵の隣に立ち、マイクを受け取り……そして、言った。

「皆様、お忙しい中お越しいただきありがとうございます。僕、帝清志郎と、岸本あゆらの婚約パーティーへ、ようこそ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

イケメン御曹司とは席替えで隣になっても、これ以上何も起こらないはずだった。

たかなしポン太
青春
【第7回カクヨムコンテスト中間選考通過作品】  本編完結しました! 「どうして連絡をよこさなかった?」 「……いろいろあったのよ」 「いろいろ?」 「そう。いろいろ……」 「……そうか」 ◆◆◆ 俺様でイメケンボッチの社長御曹司、宝生秀一。 家が貧しいけれど頭脳明晰で心優しいヒロイン、月島華恋。 同じ高校のクラスメートであるにもかかわらず、話したことすらなかった二人。 ところが……図書館での偶然の出会いから、二人の運命の歯車が回り始める。 ボッチだった秀一は華恋と時間を過ごしながら、少しずつ自分の世界が広がっていく。 そして華恋も秀一の意外な一面に心を許しながら、少しずつ彼に惹かれていった。 しかし……二人の先には、思いがけない大きな障壁が待ち受けていた。 キャラメルから始まる、素直になれない二人の身分差ラブコメディーです! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】ツインクロス

龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。

形成された花

岡本羅太
青春
幼少期に魅せられて、必然的にアイドルになった古屋瞳。 完璧なアイドルを目指す上での取捨選択の数々が彼女を直し、壊していく。 5年後、アイドルを退くことを決意した彼女はどう変わったのか。変わらなかったのか。 現在と過去を交互に覗き、その成長を紐解く。強く脆く、潔く醜く。そうやって生きた一人の少女の人生を。 【アイドル小説】

オトナになれないみづきと凜霞の4日間逃亡生活

らんでる
青春
小さな少女、みづきと大人びた少女、凜霞。 時間はたったの4日間。出会ったばかりの2人が海を目指し、繰り広げられる友情と恋愛の狭間の物語。

遥かなる遺言

和之
青春
ある資産家が孫娘に奇妙な遺言を残した。その相続の期限は祖父の四十九日まで。孫娘は遺言の真意を求めて祖父が初恋の地である樺太で祖父の源流を探す。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

処理中です...