金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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『……もしかして、俺みたいな奴と遊んでるのバレた?』
「えっ……?」
『やっぱりか……めっちゃ怒られたんちゃうん? ごめんな』

 寂しげに謝る志鬼に、あゆらの胸が締めつけられた。

「どうして志鬼が謝るのよっ、何も悪いことしていないんだから、謝らないで」
『いやあ、あれだけ人気ひとけある場所で会ってたらな、あゆらと一緒におるの楽しいからつい連れ回してもたけど、そこまで配慮できてなかったから』
「それは私が好きでしていることだもの、お願いだから、そんなことを言わないで」

 何一つ、嫌なことなどされていないのに、なぜ志鬼が悪者になってしまうのか、その不条理があゆらには辛かった。

「志鬼、私ね、今日のこと、とても楽しみにしていたのよ。だから、これに懲りずにまた誘ってほしいわ……あ、志鬼の迷惑でなければ、だけど」
『……迷惑なわけないやん、めっちゃ嬉しいんですけど』

 ドタキャンしてもあきれたり怒ったりする様子もない志鬼に、あゆらはとりあえず一安心した。
 しかし、電話の向こうにいる志鬼は、突然のパーティーに何か嫌な予感がした。

『あゆら、その、パーティーって……』
「パーティーがどうかした?」
『……や、なんでもないわ、また連絡するな』
「ええ、私も。本当に今日はごめんなさいね」
『ええって、あゆらが悪いんちゃうし……ほな』

 志鬼のその声を最後に、名残惜しくも通話が途切れた。

「あゆら様、おぐしはどのようにいたしましょう?」
「金髪で」
「――えっ!?」
「冗談よ」

 あゆらは艶やかな髪を掻き上げ、自嘲気味に笑った。
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