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第四章、愛は指先にのせて。
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警戒心の強い幸蔵のことだ、志鬼のことをずいぶん調べたのだろう。
この時あゆらは、志鬼が言った「ガキは不自由だ」という意味を痛感した。
気づけばメイドが二人、あゆらの身支度を整えるため部屋の前まで来ていた。
「あゆら様、お召し物はどちらにいたしましょう?」
「……どれでもいいわ、あなたたちが決めてちょうだい」
「は、はい、かしこまりました」
あゆらは気のない返事をして、自室へ戻った。志鬼のためならあんなに楽しかった洋服選びが、一気にどうでもよくなった。
あゆらはため息をつきながら再びドレッサーに座り、スマートフォンを手にすると通話アプリを開き、重い気分で志鬼に電話をかけた。
『はいはーい』
二回もコールをしないうちに志鬼は電話口に出た。
相手があゆらとわかってのことだろう、口調も軽快だった。
なんだかもう、あゆらは泣きそうになってきた。断りの連絡だというのに、声を聞けばさらに会いたくなってしまい、どうしようもなかった。
「あ、あのね、志鬼……今日の約束なんだけれど……行けそうにないの」
『おお、どうしたん? 体調でも悪い?』
「ううん、そうじゃなくて……お父様が急に、パーティーに出ろって……滅多に家にいないのに、たまに会うと私の都合や気持ちなんておかまいなしなんだから……」
あゆらの沈みきった声を聞き、志鬼は何があったかをあらかた察した。
この時あゆらは、志鬼が言った「ガキは不自由だ」という意味を痛感した。
気づけばメイドが二人、あゆらの身支度を整えるため部屋の前まで来ていた。
「あゆら様、お召し物はどちらにいたしましょう?」
「……どれでもいいわ、あなたたちが決めてちょうだい」
「は、はい、かしこまりました」
あゆらは気のない返事をして、自室へ戻った。志鬼のためならあんなに楽しかった洋服選びが、一気にどうでもよくなった。
あゆらはため息をつきながら再びドレッサーに座り、スマートフォンを手にすると通話アプリを開き、重い気分で志鬼に電話をかけた。
『はいはーい』
二回もコールをしないうちに志鬼は電話口に出た。
相手があゆらとわかってのことだろう、口調も軽快だった。
なんだかもう、あゆらは泣きそうになってきた。断りの連絡だというのに、声を聞けばさらに会いたくなってしまい、どうしようもなかった。
「あ、あのね、志鬼……今日の約束なんだけれど……行けそうにないの」
『おお、どうしたん? 体調でも悪い?』
「ううん、そうじゃなくて……お父様が急に、パーティーに出ろって……滅多に家にいないのに、たまに会うと私の都合や気持ちなんておかまいなしなんだから……」
あゆらの沈みきった声を聞き、志鬼は何があったかをあらかた察した。
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