金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第四章、愛は指先にのせて。

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 志鬼は瞳が小さく一重瞼なので目つきが悪く見えがちだが、眠っていると実年齢より幼く感じる。そのギャップが可愛らしいと思ったあゆらは、ついパチリとシャッターを押してしまったのだ。

 画面の中で夢の住人となっている志鬼を、あゆらは微笑ましくも、切ない胸を持って見つめていた。
 元々勉強は嫌いで授業中に居眠りをすることもあったらしいが、ここまで続け様にとなると、疲れているとしか思えなかった。
 志鬼はあれからも毎日のように深夜に至るまで売春クラブに通い、潜入捜査を続けていた。
 実際、清志郎の被害に遭った女性もいたのだが、やはり多くを語るのは拒絶され、なかなか進展のない日々が続いていた。
 あゆらには、志鬼が危険と隣り合わせの任務に神経をすり減らし、夜の睡眠時間を日中に取り返しているように見えた。
 ただ待っていることしかできない自分がもどかしく、あゆらはいつも、志鬼に何か返せるものはないかと考えていた。

「……私、あなたに頼りすぎよね、何か……できることはないのかしら」

 あゆらがそう呟いた時、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
 画面を閉じ、スマートフォンをドレッサーの机に置くと、あゆらは立ち上がってドアを押し開いた。
 するとそこにいたのは、あゆらと揃いのネグリジェを着た母の杏奈だった。

「あら、お母様、おはようございます。もう朝食の時間かしら? そろそろ下に」
「あゆら、お母さんはね、あゆらが心から好きになった人と一緒になってほしいと思っているのよ」
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