金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
124 / 228
第四章、愛は指先にのせて。

1

しおりを挟む
 あゆらが志鬼と潜入捜査をしてから早一ヶ月が経とうとしていた。
 季節は雨に恵まれた紫陽花の美しい梅雨へと移り変わった。
 学校の制服も半袖に薄手の素材となったが、志鬼は刺青を隠すため相変わらず長袖のカッターシャツにインナーを着ていた。
 しかしあゆらが志鬼の家に遊びに行く時は、半袖のTシャツとジーンズで過ごしており、そのラフな姿がなんともかっこよかった。

 志鬼はまだあゆらに手を出していなかった。
 海外では友人や家族がするようなハグや顔にキスをする行為は日課となっていたが、それ以上はしなかった。
 二人の関係性から考えれば恋人同士に違いなかったが、肝心のあゆらがまだ自分の気持ちを志鬼に伝えていなかった。
 志鬼の方も与えるだけ与えるばかりで、あゆらに対し返事を要求するようなことはしなかったため、あゆらは完全に言うタイミングを逃していたのだ。
 しかしあゆらの志鬼への思いは日毎増すばかりで、それに比例するように伝えたい気持ちも膨らんでいた。
 そう、今日、今日こそは、と。

「ああ、なんて素晴らしい快晴なの、おひさま、ありがとう」

 朝、目覚めたあゆらは豪華なレースがあしらわれたカーテンを開き、その先に広がる青空を見上げて歌うように言った。

 六月には珍しい清々しい晴れである。
 あゆらが天気を気にしていたのには、もちろん理由がある。
 今日は日曜、学校は休みで、志鬼と遊園地に行く約束をしていたのだ。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

不本意な転生 ~自由で快適な生活を目指します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,782pt お気に入り:3,699

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:16,898pt お気に入り:12,698

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,925pt お気に入り:2,083

どうやら私は竜騎士様の運命の番みたいです!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:6,588

処理中です...