金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
115 / 228
第三章、汚れた大人たち

36

しおりを挟む
「はあ、やっぱりかあ。イイ男にはみんな相手がいるんだもん。恋人が無理ならセフレでもいいよ、お兄さんならどんなエグいプレイでも付き合ったげる」
「はは、そら魅力的やな、でもあいにくそういうことは好きな子としたい男やから、悪いな」

 ――志鬼の手が熱い。
 いや、熱いのは自分の方だろうか?
 そんな正常な判断すらできないほど、あゆらの体温調節は大変なことになっていた。

「そんな男もいるんだねえ、ムカつくけど、いい夢見た気分。いいよ、知ってること全部話したげる」
「おお、助かるわ」
「好きな相手ってどんな子?」
「そうやなあ……」

 志鬼の手に力がこもる。
 まるで俺の思いを聞けとばかりに。

「ツヤツヤでサラサラの長い黒髪に、大きい目がキラキラしてて、唇プルプルで、色白くて華奢で、品のある美人で気強いのにちょっと抜けてるとこがまた可愛くて、泣きぼくろがめっちゃセクシー……」

 ――ガタンッ!
 志鬼がそこまで言ったところで、椅子が倒れる音がした。
 
 志鬼のあまりのアピールに、照れが臨界点を突破したあゆらが勢い余って立ち上がったせいだ。
 無言で固まっているあゆらは、しばし部屋中の視線を集めた。

「……お、お手洗い、に」
「……何、ただのトイレ? ビックリしたじゃん。男性用はあっちだよ」

 一呼吸置いてようやく漏らした低い声に、アリスは怪訝な顔をしながらお手洗いの場所を指差して教えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君のために僕は歌う

なめめ
青春
六歳の頃から芸能界で生きてきた麻倉律仁。 子役のころは持てはやされていた彼も成長ともに仕事が激減する。アイドル育成に力を入れた事務所に言われるままにダンスや歌のレッスンをするものの将来に不安を抱いていた律仁は全てに反抗的だった。 そんな夏のある日、公園の路上でギターを手に歌ってる雪城鈴菜と出会う。律仁の二つ上でシンガーソングライター志望。大好きな歌で裕福ではない家族を支えるために上京してきたという。そんな彼女と過ごすうちに歌うことへの楽しさ、魅力を知ると同時に律仁は彼女に惹かれていった……… 恋愛、友情など芸能界にもまれながらも成長していく一人のアイドルの物語です。

水曜日は図書室で

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
青春
綾織 美久(あやおり みく)、高校二年生。 見た目も地味で引っ込み思案な性格の美久は目立つことが苦手でクラスでも静かに過ごしていた。好きなのは図書室で本を見たり読んだりすること、それともうひとつ。 あるとき美久は図書室で一人の男子・久保田 快(くぼた かい)に出会う。彼はカッコよかったがどこか不思議を秘めていた。偶然から美久は彼と仲良くなっていき『水曜日は図書室で会おう』と約束をすることに……。 第12回ドリーム小説大賞にて奨励賞をいただきました! 本当にありがとうございます!

8年間未来人石原くん。

七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。 「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」 と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず) これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

【完結】カワイイ子猫のつくり方

龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。 無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

スカートなんて履きたくない

もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に 高校の文化祭を楽しんでいた。 イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。 女友達との関係が主として描いてます。 百合小説です ガールズラブが苦手な方は ご遠慮ください 表紙イラスト:ノノメ様

【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン

カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。 自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。

トキノクサリ

ぼを
青春
セカイ系の小説です。 「天気の子」や「君の名は。」が好きな方は、とても楽しめると思います。 高校生の少女と少年の試練と恋愛の物語です。 表現は少しきつめです。 プロローグ(約5,000字)に物語の世界観が表現されていますので、まずはプロローグだけ読めば、お気に入り登録して読み続けるべき小説なのか、読む価値のない小説なのか、判断いただけると思います。 ちなみに…物語を最後まで読んだあとに、2つの付記を読むと、物語に対する見方がいっきに変わると思いますよ…。

処理中です...