金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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「お兄さん、いい身体してるでしょ、服着てたら細く見えるけど、あたしわかるわ」

 そう言って彼女は情欲的に微笑みながら、志鬼の胸や腹の辺りを無作法に触り出した。
 志鬼はそんなことは気にも留めず、探す手間が省けてラッキーだと思ったくらいだった。

「すごいな、大正解や」
「あれ、関西弁? どこから来たの? 大阪とか?」
「兵庫やで、神戸や」
「神戸かぁ、いいなあ、お洒落な街だろうね」
「そうでもないけどな」

 キャミソールから覗く胸や太ももを擦り寄せるようにして志鬼を誘惑する彼女に、あゆらは見開いた目が戻らなかった。
 先ほどの嫌な妄想が、今まさに眼前で繰り広げられているのだ。
 あゆらの握った掌がわなわなと震える。
 ――まだ私でさえそんなに触ったことがないのに。
 故郷のことだって、あまり聞くのは無粋だろうかと我慢もしていたのに、どうしてたった今会ったばかりのこの子が、それをあっさり引き出すのか、と。
 あゆらはこんな状況でありながら、彼女を羨み、嫉妬してしまう。

「お兄さんならあたし、タダでいいよ」
「そうやなあ……ほな、とりあえず飲んで、ちょっとお話しよか……?」
「え? う、うん。いいけどぉ?」

 志鬼が彼女の肩を抱き、強引にダイニングテーブルに連れて行く。
 警戒心を解くために、距離を詰めているだけだとわかっている。わかっているのだが、頭に心がついて行かない。
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