金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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 もうやめてくれと、耳を塞ぎたくなるような下劣げれつな言葉が舞う。
 志鬼はそれに対しても相変わらずうまく話を合わせていたが、徐々にあゆらの中で不安が膨らんでいく。
 ミヤの言う通りになどするはずがないが、もしも志鬼が女の子と……。
 そんな想像をしてしまったあゆらは、自分でも驚くほどショックを受けた。
 
「じゃあ俺はそろそろ上に戻るから。帰る時はこれでコールしてくれたら鍵開けるし」
「了解」

 ミヤはそう言って出入り口付近の壁に設置された電話を指差すと、軽い足取りで階段を上って行った。

 ミヤの足音が遠のき、姿が見えなくなっても、あゆらは固まったままだった。
 ――が、ふと、背中を指先でつつかれる感覚に、ハッと顔を上げた。
 
「大丈夫? トイレ行くか?」

 志鬼は高い背を屈め、あゆらの顔を覗き込みながら囁き声で言った。
 気遣うような言動に、いつもの優しい志鬼を見たあゆらはこの上なく安心した。
 
「……ん、平気」
「ほな、話聞けそうな女の子探すか」

 その言葉を最後に、前を向いた志鬼の顔が引き締まる。
 そうして歩き始め、辺りを見回そうとした時だった。

 突如、勢いよく志鬼にぶつかって来た一人の女性がいた。
 いや、女の子と呼ぶべきか。化粧はしているがあどけなさが残る彼女はあゆらよりも背が低く、懸命に志鬼を見上げていた。
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