金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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「そろそろ買い物に行った方がいいんじゃないかしら? その間に私はお母様にお友達のところに行くと連絡をしておくから」
「お、嘘の連絡やん、不良の仲間入りや」
「変な言い方しないでよ」
「なあなあ、あゆら」
「今度は何?」
「このままちょっとだけ、ぎゅうしてもええ?」

 このまま、というのはつまり志鬼が上半身裸のままで、の意味を指す。

「嫌やったら我慢するから」

 大体は勝手にくっついてくる志鬼が、たまにこうして選択を委ねてくるのは、なんだかずるいな、とあゆらは思った。

「……す、少しだけね、がんばってくれているご褒美に」

 少し目を泳がせ間を置いたのち、あゆらの了承を得た志鬼は嬉しそうに彼女を腕の中に閉じ込めた。
 初めて正面から抱きしめられたあゆらは、緊張で全身が熱くなり、とても自分から抱きしめ返すことができなかった。

「ありがとう、あゆら。好きになれとは言わんから、好きでおるんは許してな」

 衣類を着ている時よりも志鬼の気持ちが体温とともに伝わってくるようで、あゆらは夢でも見ているような心地だった。

 ――これじゃあ、どちらへのご褒美かわからないわね。

 志鬼の広い身体に包まれながら、あゆらは彼と親しくなることが許されない境遇を切なく呪った。
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