金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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「あの、あゆらさん、俺の話聞いてました?」
「失礼ね、ちゃんと聞いていたわよ」
「ならなんで『私も行く』とか言うねん、売春クラブやで? そんな危ない場所に連れて行けるわけないやろ、俺一人で行く」
「わかった上で言ったのよ」

 ここまで言っても引き下がらないあゆらに、志鬼は思わず声を荒げた。

「なんもわかってないやろ!? あゆらが見たらトラウマになるような場面もあるやろうし、第一身元バレたらやばいやろ!」
「それは志鬼だって同じでしょ!?」
「同じやないわ! 俺は失うもの何もないからええけど、あゆらはそういうわけにいかんやろうが!」
「私が美鈴のためにしていることなのに、高みの見物は嫌なのよ! 志鬼にばかり危ないことをさせて、自分だけお綺麗なままなんて、納得できないわ!」

 負けじと意思をぶつけてくるあゆらに、志鬼は渋い顔をしながら困り果てた。

「……使われてる俺がそれでええ言うてるのに、なんちゅう聞き分けのないお嬢様や」
「そうね、わがままで聞かん坊で面倒だわ、でもこれが本当の私よ」

 岩をも突き通すような気の強い瞳に、志鬼は深い息を吐くと、やれやれ、といった風に細い眉を下げて笑った。

「降参や……そこまで言われたら聞くしかない」

 志鬼の答えに、あゆらは厳しい表情を緩め満足げに微笑んだ。
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