90 / 228
第三章、汚れた大人たち
11
しおりを挟む
「あの、あゆらさん、俺の話聞いてました?」
「失礼ね、ちゃんと聞いていたわよ」
「ならなんで『私も行く』とか言うねん、売春クラブやで? そんな危ない場所に連れて行けるわけないやろ、俺一人で行く」
「わかった上で言ったのよ」
ここまで言っても引き下がらないあゆらに、志鬼は思わず声を荒げた。
「なんもわかってないやろ!? あゆらが見たらトラウマになるような場面もあるやろうし、第一身元バレたらやばいやろ!」
「それは志鬼だって同じでしょ!?」
「同じやないわ! 俺は失うもの何もないからええけど、あゆらはそういうわけにいかんやろうが!」
「私が美鈴のためにしていることなのに、高みの見物は嫌なのよ! 志鬼にばかり危ないことをさせて、自分だけお綺麗なままなんて、納得できないわ!」
負けじと意思をぶつけてくるあゆらに、志鬼は渋い顔をしながら困り果てた。
「……使われてる俺がそれでええ言うてるのに、なんちゅう聞き分けのないお嬢様や」
「そうね、わがままで聞かん坊で面倒だわ、でもこれが本当の私よ」
岩をも突き通すような気の強い瞳に、志鬼は深い息を吐くと、やれやれ、といった風に細い眉を下げて笑った。
「降参や……そこまで言われたら聞くしかない」
志鬼の答えに、あゆらは厳しい表情を緩め満足げに微笑んだ。
「失礼ね、ちゃんと聞いていたわよ」
「ならなんで『私も行く』とか言うねん、売春クラブやで? そんな危ない場所に連れて行けるわけないやろ、俺一人で行く」
「わかった上で言ったのよ」
ここまで言っても引き下がらないあゆらに、志鬼は思わず声を荒げた。
「なんもわかってないやろ!? あゆらが見たらトラウマになるような場面もあるやろうし、第一身元バレたらやばいやろ!」
「それは志鬼だって同じでしょ!?」
「同じやないわ! 俺は失うもの何もないからええけど、あゆらはそういうわけにいかんやろうが!」
「私が美鈴のためにしていることなのに、高みの見物は嫌なのよ! 志鬼にばかり危ないことをさせて、自分だけお綺麗なままなんて、納得できないわ!」
負けじと意思をぶつけてくるあゆらに、志鬼は渋い顔をしながら困り果てた。
「……使われてる俺がそれでええ言うてるのに、なんちゅう聞き分けのないお嬢様や」
「そうね、わがままで聞かん坊で面倒だわ、でもこれが本当の私よ」
岩をも突き通すような気の強い瞳に、志鬼は深い息を吐くと、やれやれ、といった風に細い眉を下げて笑った。
「降参や……そこまで言われたら聞くしかない」
志鬼の答えに、あゆらは厳しい表情を緩め満足げに微笑んだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
あの日は、晴れのち曇りの天気予報だった
平木明日香
青春
中学生の頃に両親を亡くし、高校を中退した小鳥遊みかんは、祖母と2人で実家の牧場を切り盛りしていた。
学生生活を捨て、生活のために働くことを決意したみかんだったが、次第に自分の将来について不安を感じるようになってしまう。
そんな折、とあることがきっかけで祖母と喧嘩した彼女は、小学生の頃に別れた幼馴染からの誘いで、上京することを決める。
幼馴染は彼女にとっての初恋の相手であり、もう二度会うことがないと思っていた「夢の中」の人だった。
沖縄に住んでいた彼女にとって、東京という街はそれほどまでに遠い場所だった。
会うためのお金も、時間も、子供だった2人にとっては、あまりにもぶ厚い「距離」だったのだ。
上京後、彼の紹介で大学の寮に上がり込んだ彼女は、幼馴染の夢である「カメラマン」の仕事のモデルになるため、ありのままの自分を探す日々を送る。
今を生きる人を撮りたい。
彼にそう言われ、将来の自分についてを考える日々が始まった。
未来のこと、やりたい仕事。
生きるべくして高校を中退した彼女だったが、「生きる」ということがどういうことかを、いつからか見失っていた。
上京して5年。
彼女の元に連絡が入る。
祖母が入院したという、親戚からの電話だった。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

読書のすすめ
たかまちゆう
青春
図書委員である宮本さんのところへ、ある日クラスメイトの吉見さんが頼み事をしにきた。
学年一の秀才、羽村君に好かれるため、賢くなれそうな本を教えてほしい、と。
苦手なタイプの子だなと思いつつ、吉見さんの熱意に押されて応援し始める宮本さんだったが――。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜
青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。
彼には美少女の幼馴染がいる。
それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。
学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。
これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。
毎日更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる