金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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「帝を逮捕させるには自白が一番やけど、まあそんなことするタマではないやろうからな。となれば……あゆら?」

 あゆらの異変に気づいた志鬼は、話を途中で切った。
 あゆらはテーブルに目一杯握りしめた両拳を置き、俯いて震えていた。
 怒り、悲しみ、悔しさ。様々な感情が入り乱れ、今にも破裂しそうだった。

「……私は、暴漢に襲われそうになった時、本当に怖かったの……あの時志鬼が来てくれなかったら、私も美鈴たちと同じような目に遭っていただろうし……でも、美鈴や、他の女の子たちは……誰にも助けてもらえずに、好きでもない、男の人たちに……ッ」

 同じ女性として、それがどれだけの恐怖と屈辱だったのか、あゆらは被害者たちの気持ちを考えると取り乱さずにはいられなかった。
 対する志鬼は、会ったこともない少女たちの分まで苦しむあゆらの優しさに、心が洗われるような気持ちだった。

「ごめんなさい……少ししたら、落ち着くから」
「謝らんでええ、しっかり聞いただけで立派や、ようがんばったな」

 志鬼はそう言いながら、あゆらの頭を撫でた。
 包み込むような大きな掌で触れられ、あゆらは堪えていた涙を溢れさせた。

「……いま、優しくしな、でよ……涙腺が」
「泣くのは我慢せん方がええ言うたやろ。悲しいのを悲しいと思えるんは大事なことやで。何も感じんようになったらおしまいや」
「……志鬼、は……?」
「……ん~? 俺は、そうやな……もうちょい鈍感でもよかったかもな」
 
 視線を外し、遠くを眺めて言った志鬼は、少し寂しげに見えた。
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