金色の庭を越えて。

碧野葉菜

文字の大きさ
上 下
85 / 228
第三章、汚れた大人たち

6

しおりを挟む
 そう考えれば、辻褄が合ってしまった。
 あゆらは写真の中にいる少女たちに美鈴の姿を重ねた。自身が何も知らず呑気に暮らしている間、美鈴がこのいやらしい目つきをした男たちの餌食になっていたかと思うと居た堪れなかった。

「俺が思うに、これは富裕層向けの会員制売春クラブや。その証拠に、あゆらも知ってる顔があるやろ?」

 志鬼の言う通り、写真には巷で有名な代議士や弁護士など、あゆらがホームパーティーなどで見かけたことがある人物もいた。

「探偵の奴がなんか匂うと思って、監察医が出てきた店を張ってたらこいつらの写真が撮れたわけや。帝はこの売春クラブに自分が脅した女の子らを売り捌いて、権力者たちがそれを買う、っちゅう需要と供給が成立してるんや。だから校長は帝の暴挙も知らんぷり、そらそうや、帝の罪を明るみにすることは、自分の罪を晒すのと同じやからな」

 清志郎を警察に突き出せば、捜査線上に自分たちが浮かび、芋づる式に逮捕されかねない。
 つまり清志郎は、この売春クラブの客である社会的地位が高い者すべてを味方につけているということになる。

「どうりで人殺してもあれだけ余裕でおれるはずやわ。帝がどうやってその売春クラブを知ったかは謎やけどな。これだけの権力者を寄せ集めてるクラブや、元締めは相当な大物やで。まさか監察医からここまでの話が出てくるとはな」
「美鈴の……結果は?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

8年間未来人石原くん。

七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。 「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」 と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず) これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

人魚のカケラ

初瀬 叶
青春
あの娘は俺に言ったんだ 『もし私がいなくなっても、君は……君だけには覚えていて欲しいな』 父親と母親が離婚するらしい。 俺は父親、弟は母親が引き取るんだと。……俺等の気持ちなんてのは無視だ。 そんな中、弟が入院した。母親はまだ小学生の弟にかかりきり、父親は仕事で海外出張。 父親に『ばあちゃんの所に行け』と命令された俺は田舎の町で一ヶ月を過ごす事になる。 俺はあの夏を忘れる事はないだろう。君に出会えたあの夏を。 ※設定は相変わらずふんわりです。ご了承下さい。 ※青春ボカロカップにエントリーしております。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

あの日は、晴れのち曇りの天気予報だった

平木明日香
青春
中学生の頃に両親を亡くし、高校を中退した小鳥遊みかんは、祖母と2人で実家の牧場を切り盛りしていた。 学生生活を捨て、生活のために働くことを決意したみかんだったが、次第に自分の将来について不安を感じるようになってしまう。 そんな折、とあることがきっかけで祖母と喧嘩した彼女は、小学生の頃に別れた幼馴染からの誘いで、上京することを決める。 幼馴染は彼女にとっての初恋の相手であり、もう二度会うことがないと思っていた「夢の中」の人だった。 沖縄に住んでいた彼女にとって、東京という街はそれほどまでに遠い場所だった。 会うためのお金も、時間も、子供だった2人にとっては、あまりにもぶ厚い「距離」だったのだ。 上京後、彼の紹介で大学の寮に上がり込んだ彼女は、幼馴染の夢である「カメラマン」の仕事のモデルになるため、ありのままの自分を探す日々を送る。 今を生きる人を撮りたい。 彼にそう言われ、将来の自分についてを考える日々が始まった。 未来のこと、やりたい仕事。 生きるべくして高校を中退した彼女だったが、「生きる」ということがどういうことかを、いつからか見失っていた。 上京して5年。 彼女の元に連絡が入る。 祖母が入院したという、親戚からの電話だった。

読書のすすめ

たかまちゆう
青春
図書委員である宮本さんのところへ、ある日クラスメイトの吉見さんが頼み事をしにきた。 学年一の秀才、羽村君に好かれるため、賢くなれそうな本を教えてほしい、と。 苦手なタイプの子だなと思いつつ、吉見さんの熱意に押されて応援し始める宮本さんだったが――。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

処理中です...