金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第三章、汚れた大人たち

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 その日の放課後、あゆらは初めて志鬼の家に招かれた。
 例の探偵から来た調査結果を聞くためである。
 とても外で話せる内容ではないので家に行くのは自然な流れだったが、密室に男性と二人きりになったことのないあゆらからすればそれは特別な経験だった。
 美鈴の件が進展するかもしれないという期待と不安、そして志鬼のプライベート空間に足を踏み入れる胸の高鳴りを抱えながら、あゆらは彼に従った。

「……そうや、重大なことを言うの忘れてたんやけど」

 二人で電車を降り、道を歩いていると急に志鬼が真剣な顔をしたのであゆらは何事かと身構えた。

「な、何よ?」
「俺の家めっちゃ小さいしきったないけど大丈夫?」

 それを聞いたあゆらは拍子抜けした。

「……なんだ、そんなこと、始めから期待していないから平気よ」
「ほんまに? そんなんで嫌われたらどうしよ思て。親父が必要最小限の資金しかくれんから、ええとこには住めんし……ガキは不自由やな、早く大人になりたいわ」

 今時親に甘やかされ子供のままでいたいという学生も少なくはないのに、志鬼は早く自立したがっているようだった。彼の考える自立が、どのような方法なのかまでは定かではなかったが。
 志鬼の家は古びた茶系のアパートの二階だった。確かに小さいが先に汚いと聞いていたせいか、あゆらはそれほどひどいとは思わなかった。
 志鬼にドアを開いてもらい中に入ると、すぐ左側にシンクやコンロといったキッチンがあり、その隣に小ぶりな冷蔵庫、中央の和室ぽつんとローテーブルが置かれており、右側にはお手洗いらしきドアと、その奥に浴室があった。
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