金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第二章、騎士と王子

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「とんでもない身体能力だね、ぜひ運動部に入ることをお勧めするよ」
「どうも、でもあいにく放課後はお姫様で予定がいっぱいなもんで」

 自慢げな顔で言う志鬼に、清志郎は額に手を当てると大袈裟なほど悲哀に満ちた表情をした。

「健気なものだね、どれだけ奉仕しても騎士が姫と一緒になれるはずがないのに。姫と結婚できるのは、同じ立場である王子だけだよ」
「……どういう意味や?」
「焦らないで、いずれわかるから」

 たくらみを秘めたような余裕の笑みを残し、清志郎はテニスコートを後にした。
 
 清志郎の例え。騎士が志鬼であるならば、同じ立場である王子は、清志郎のことを指しているのか?
 
 ――まさか、あいつもあゆらのこと……。

 清志郎の言葉に心がささくれ立つのを感じながら、志鬼はこちらを見ているあゆらの元へ歩み寄った。
 
「……俺、あいつ嫌い」

 目の前に来るなりそんなことを言う志鬼に、あゆらは目を丸くして心配そうに顔を覗き込んだ。

「どうしたの? 二人で話しているようだったけれど」
「いじめられた」
「えっ? 何を言われたのよ?」
へこんだからパンツ見せて」
「……怒るわよ」

 優しく注意するしとやかな声。凛とした美しい姿勢に、女性らしい品のある仕草。

 ――釣り合わんのはわかってるけど、人に言われたら腹立つな。

 自分は社会からのはみ出しもので、本当はあゆらの側にいてよい人間ではないことは、志鬼本人が一番理解していた。
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