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第二章、騎士と王子
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「はあ、クソ生意気なガキやった」
動物や子供は優しい人間がわかるというのは本当なのか。口は悪くとも面倒見がよく飾らない志鬼を見て、あゆらは彼のような人が人の上に立つに相応しいような気がしていた。
志鬼本人が、それを望んでいるか否かは別として。
「……志鬼っていい父親になりそうね、本当の意味で、子供と向き合える」
あゆらが言うと、志鬼は困ったように頭を掻き、苦笑いをした。
「そうなるためにはまず自分と向き合わんとな」
「……どういうこと?」
「いや、こっちの話や。お、次あれやったるわ」
「あ、待ってよ志鬼」
なんとなくはぐらかされたような気がしたあゆらだったが、クレーンゲームの前に誘われるとあっという間に志鬼のペースに巻き込まれてしまう。
ファンシーな音楽を奏でながら「私を獲って!」と言わんばかりに山盛りになっている硝子越しのぬいぐるみたち。
クラシックしか聴かず、フランス製などの高級な人形やテディベアしか持っていないあゆらにとっては、こんなに小さくカラフルなアニマルたちは可愛らしく見えた。
「猫拾った記念で猫のぬいぐるみ獲るか、なあアキ」
「ナゥ」
志鬼に呼ばれて当たり前のように嬉しそうな返事をする子猫。
「この子の名前を決めたの? また、どうしてアキなのよ?」
「あゆらの“あ”と、志鬼の“き”取って“アキ”」
「えっ……」
動物や子供は優しい人間がわかるというのは本当なのか。口は悪くとも面倒見がよく飾らない志鬼を見て、あゆらは彼のような人が人の上に立つに相応しいような気がしていた。
志鬼本人が、それを望んでいるか否かは別として。
「……志鬼っていい父親になりそうね、本当の意味で、子供と向き合える」
あゆらが言うと、志鬼は困ったように頭を掻き、苦笑いをした。
「そうなるためにはまず自分と向き合わんとな」
「……どういうこと?」
「いや、こっちの話や。お、次あれやったるわ」
「あ、待ってよ志鬼」
なんとなくはぐらかされたような気がしたあゆらだったが、クレーンゲームの前に誘われるとあっという間に志鬼のペースに巻き込まれてしまう。
ファンシーな音楽を奏でながら「私を獲って!」と言わんばかりに山盛りになっている硝子越しのぬいぐるみたち。
クラシックしか聴かず、フランス製などの高級な人形やテディベアしか持っていないあゆらにとっては、こんなに小さくカラフルなアニマルたちは可愛らしく見えた。
「猫拾った記念で猫のぬいぐるみ獲るか、なあアキ」
「ナゥ」
志鬼に呼ばれて当たり前のように嬉しそうな返事をする子猫。
「この子の名前を決めたの? また、どうしてアキなのよ?」
「あゆらの“あ”と、志鬼の“き”取って“アキ”」
「えっ……」
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