金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第二章、騎士と王子

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 敵対する組との抗争や、邪魔な人間の処理などで、物心つく頃から死体を目にすることも珍しくなかった。
 物怖じしないのは肝が座っているからではなく慣れただけ、すぐに行動に移すのは明日自分が生きている保証がないため、後悔しないように今できる最善を尽くす。それらは危険と隣り合わせの生い立ち故に染みついた悲しきさがだった。
 志鬼もそれを自覚しているため、あまりよいものではないと思っていた。
 それなのに、あゆらに尊いものでも見るかのような目で褒められ、つい驚いてしまったのだ。
 自分とは違う美しい瞳に、映ってはいけないような、ずっと映っていたいような、志鬼はもどかしくも甘い気持ちに揺れた。

「あゆらは、純粋やな」
「私はただの世間知らずよ、純粋とは違うわ」
「ほう、世間知らずねえ」

 そこで志鬼は、面白い悪戯を思いついた子供のような顔をした。

「ほな、岸本家の御令嬢……ちょっぴりイケナイお遊び、してみる?」

 興味を惹く誘い文句に、あゆらは首を傾げながら不安と期待に胸を膨らませた。
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