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第二章、騎士と王子
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翌朝、あゆらは普段と変わらない時間に登校した。隣には母の杏奈が付き添っている。
校内で死亡者が出たということで、緊急で保護者会が開かれることになったためだ。
そこに父である幸蔵の姿はない。
今回だけに限らず、幸蔵が娘の行事に参加したことは一度もなかった。それなのに、稀に顔を合わせれば険しい顔で文句だけをつける。
世間では聖人君子で通っている幸蔵は、あゆらにとって恐怖の象徴でしかなかった。
「驚いたわ、あの美鈴ちゃんが亡くなるなんて……あゆらもショックだったでしょう、親御さんになんて声をかければいいか……でもあまり公に親しくすると、また幸蔵さんに叱られそうだし……」
こんな時でも自分を守ることしか考えない杏奈に、あゆらはため息をつくと無言で保護者会が開かれる大ホールの前で別れた。
生徒たちは、短縮ではあるが通常通り授業が行われるため、自分のクラスに向かうのである。
あゆらは教室の前に立ち止まり、ドアを開けようとしたが、中から聞こえる声に動きを止めた。
「あゆらさんったら、近頃おかしいんじゃなくて? この間もわたくしたちを美術室に放って一人で帰ってしまいましたし」
「ええ、本当に。帝くんにあんなひどいことを言うだなんて、彼への嫉妬かしら? あゆらさん、自慢の成績もいつも帝くんには敵わないもの」
「お父様の権力がなければあんな高飛車な方とお付き合いもしませんのに、勘違いも甚だしいこと」
「あの絵画の受賞だってきっとお父様に口利きしてもらったに決まっていますわ、大したことがなかったもの」
校内で死亡者が出たということで、緊急で保護者会が開かれることになったためだ。
そこに父である幸蔵の姿はない。
今回だけに限らず、幸蔵が娘の行事に参加したことは一度もなかった。それなのに、稀に顔を合わせれば険しい顔で文句だけをつける。
世間では聖人君子で通っている幸蔵は、あゆらにとって恐怖の象徴でしかなかった。
「驚いたわ、あの美鈴ちゃんが亡くなるなんて……あゆらもショックだったでしょう、親御さんになんて声をかければいいか……でもあまり公に親しくすると、また幸蔵さんに叱られそうだし……」
こんな時でも自分を守ることしか考えない杏奈に、あゆらはため息をつくと無言で保護者会が開かれる大ホールの前で別れた。
生徒たちは、短縮ではあるが通常通り授業が行われるため、自分のクラスに向かうのである。
あゆらは教室の前に立ち止まり、ドアを開けようとしたが、中から聞こえる声に動きを止めた。
「あゆらさんったら、近頃おかしいんじゃなくて? この間もわたくしたちを美術室に放って一人で帰ってしまいましたし」
「ええ、本当に。帝くんにあんなひどいことを言うだなんて、彼への嫉妬かしら? あゆらさん、自慢の成績もいつも帝くんには敵わないもの」
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