金色の庭を越えて。

碧野葉菜

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第一章、発端

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「……でも、志鬼が言った通り、解剖をしたら他殺とわかって、私が刑事さんに話をすれば帝くんは逮捕されるのかしら?」
「それはちゃんとした解剖がされたら、の話や」
「どういう意味……?」
「帝って男、ずいぶん余裕やったよな? 凶器は当然処分済みやろうし、何か後ろ盾でもある可能性が高い。親は偉大なるお医者様なんやろ? なら、監察医や法医学教室にも顔が利くやろうし遺族に解剖を頼まれても証拠隠滅なんか、易い仕事やろな」
「それって、つまり」
「嘘の解剖記録を書くってことや。他殺でも自殺として処理したら事件にはならんから警察も動かん」

 あゆらにとっては初めて知る社会の裏にあたる醜い部分だったが、目を逸らしてはならないと気を引き締めた。
 
「昔ながらのお偉いさんは癒着しまくってる奴らも多いからな、もちろん真面目に正義やってる人らもおるけど」
「そんなに詳しいのって、極道、と繋がりがある人もいる、ってこと……?」
「おるで、警察やめて野間口に入った奴何人も知ってるし、内通してる奴もおる。じゃないと極道がいつまでも存在するわけないやん」
「た、確かに」

 志鬼の説明に妙に納得してしまったあゆらは、心持ち肩を落とした。

「じゃあ、一体どうすれば……」
「俺の知り合いになかなか有能な探偵がおるから、とりあえずそいつに探らせるか」
「な、何を?」
「遺体を解剖した監察医の弱みを握って、軽く脅して実際どんな結果が出たかと同時に、誰に偽装を頼まれたか聞く」
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