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第一章、発端
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あゆらは体育の授業中、隙を見て美鈴に「後で話がある」と耳打ちをし、女子更衣室に残るように伝えた。
さすがに更衣室ならば清志郎に気づかれないと踏んだあゆらは、そこで例の件を話すことにしたのだ。
体育が終わり、女生徒たちが更衣室を出て行く中、あゆらと美鈴はいつも仲良くしているグループの友人に適当な理由をつけ二人だけ最後に残った。
念のため更衣室の鍵を閉めると、あゆらは美鈴に向き直り、真剣な面持ちで口を切った。
「……美鈴」
「どうしたの……あ、どうしたんですか? あゆらさん」
「敬語はいらないわ、名前にさんもいらない、前みたいに呼んでちょうだい」
美鈴の親の経営が破綻する前は、二人は敬語や敬称もつけずに話せる唯一の親友だった。
あゆらにそう言われた美鈴は、無邪気にも喜びの表情を見せた。
「嬉しいな、こんな風に二人で話すの、何年ぶりだろう」
「そんなことを言ってる場合じゃないでしょう? ねえ、美鈴、私はね、見たのよ」
「え……?」
「昨日の夕方、帝くんに……ひどいことをされている、ところを」
口にするのも嫌な事実を、あゆらは苦しげな表情で絞り出すように述べた。
すると案の定、美鈴の丸メガネの奥にある円な瞳が動揺に満ちた。
「な、んで、それ」
「たまたま近くにいて、大きな音がしたから何かと思って行ったのよ。そしたら部屋が少し開いていて……気になって覗いてみたら……」
美鈴はあゆらに一部始終を見られていたと知り、悲痛に目を細めた。
さすがに更衣室ならば清志郎に気づかれないと踏んだあゆらは、そこで例の件を話すことにしたのだ。
体育が終わり、女生徒たちが更衣室を出て行く中、あゆらと美鈴はいつも仲良くしているグループの友人に適当な理由をつけ二人だけ最後に残った。
念のため更衣室の鍵を閉めると、あゆらは美鈴に向き直り、真剣な面持ちで口を切った。
「……美鈴」
「どうしたの……あ、どうしたんですか? あゆらさん」
「敬語はいらないわ、名前にさんもいらない、前みたいに呼んでちょうだい」
美鈴の親の経営が破綻する前は、二人は敬語や敬称もつけずに話せる唯一の親友だった。
あゆらにそう言われた美鈴は、無邪気にも喜びの表情を見せた。
「嬉しいな、こんな風に二人で話すの、何年ぶりだろう」
「そんなことを言ってる場合じゃないでしょう? ねえ、美鈴、私はね、見たのよ」
「え……?」
「昨日の夕方、帝くんに……ひどいことをされている、ところを」
口にするのも嫌な事実を、あゆらは苦しげな表情で絞り出すように述べた。
すると案の定、美鈴の丸メガネの奥にある円な瞳が動揺に満ちた。
「な、んで、それ」
「たまたま近くにいて、大きな音がしたから何かと思って行ったのよ。そしたら部屋が少し開いていて……気になって覗いてみたら……」
美鈴はあゆらに一部始終を見られていたと知り、悲痛に目を細めた。
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