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第一章、発端
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ショックのあまり、あゆらはしばらく閉めきったドアの前に立ち尽くしていた。
話せば理解してくれる、そう思っていたあゆらの淡い期待は教師たちの答えにより脆くも崩れ去った。
少なくとも教師たちにとって、清志郎より信頼するに値しないと判断されたことがあゆらのプライドをも切り刻んだ。
――どうしよう、味方が誰もいない。
ひどく心細い中、あゆらの脳裏をよぎるのは、昨夜助けてくれた、あの彼だった。
あれほどの強さがあれば、もしも彼が同じ状況だったなら、どう行動するのだろう? と、考えずにはいられなかった。
しかし、もう会えない人のことを思ったって無意味だと肩を落としたあゆらは、仕方なく教室に向かおうと顔を上げた。
すると、前方から姿勢よく歩いてくる人物が目に入った。
清志郎である。
彼は普段と変わらない涼しげな表情で、両手に女子生徒を連れていた。
あゆらは思わず顔を背けると、静かに呼吸を整えてから再度清志郎の方を向き、自然体を装い歩き出した。
たった今あなたの存在に気づいたと言わんばかりの演技をしながら、清志郎と目を合わせると、あゆらは柔らかく微笑んだ。
「ご機嫌よう、帝くん」
声をかければいつも通りの笑顔を見せる清志郎に、あゆらはあの現場を見たのが自分だとバレていないと思い、胸を撫で下ろした。
「ご機嫌よう、岸本さん……あれ、髪にゴミがついているよ」
清志郎は挨拶に応じた後、そう言ってあゆらの前に立ち止まると、髪に手を伸ばし同時に耳元に唇を寄せた。
「昨日はどうも」
.
話せば理解してくれる、そう思っていたあゆらの淡い期待は教師たちの答えにより脆くも崩れ去った。
少なくとも教師たちにとって、清志郎より信頼するに値しないと判断されたことがあゆらのプライドをも切り刻んだ。
――どうしよう、味方が誰もいない。
ひどく心細い中、あゆらの脳裏をよぎるのは、昨夜助けてくれた、あの彼だった。
あれほどの強さがあれば、もしも彼が同じ状況だったなら、どう行動するのだろう? と、考えずにはいられなかった。
しかし、もう会えない人のことを思ったって無意味だと肩を落としたあゆらは、仕方なく教室に向かおうと顔を上げた。
すると、前方から姿勢よく歩いてくる人物が目に入った。
清志郎である。
彼は普段と変わらない涼しげな表情で、両手に女子生徒を連れていた。
あゆらは思わず顔を背けると、静かに呼吸を整えてから再度清志郎の方を向き、自然体を装い歩き出した。
たった今あなたの存在に気づいたと言わんばかりの演技をしながら、清志郎と目を合わせると、あゆらは柔らかく微笑んだ。
「ご機嫌よう、帝くん」
声をかければいつも通りの笑顔を見せる清志郎に、あゆらはあの現場を見たのが自分だとバレていないと思い、胸を撫で下ろした。
「ご機嫌よう、岸本さん……あれ、髪にゴミがついているよ」
清志郎は挨拶に応じた後、そう言ってあゆらの前に立ち止まると、髪に手を伸ばし同時に耳元に唇を寄せた。
「昨日はどうも」
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