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第一章、発端
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この光景は、あゆらにはあまりに衝撃的だった。いや、刺激的と言った方が相応しいかもしれない。
清志郎の暴挙を見た時とは、正反対の感情が湧き立った。
再び静寂が訪れると、金髪の彼は三人がすっかり伸びていることを確認した後、ラフなジーンズのポケットに手を入れ、無言で踵を返した。
目と口を丸く開いたままのあゆらは、それを見て我に返ると懸命に声を上げた。
「あ、あのっ……!」
せめて助けてくれたお礼を言わなければと口を開いたものの、驚きと興奮のせいでうまく言葉が出なかった。
すると彼は振り返り、あゆらを見た。
糸のような細いつり目に、高い鼻、横に幅広い口。美形とは言えなかったが、どこか雰囲気のある個性的な顔つきをしていた。
「別嬪さんがこんな暗い場所一人で歩いてたら危ないやろ、気をつけや」
ついさっきまで鬼のような力を披露していたとは思えない、軽快な口調と気さくな笑顔。
そのギャップは、彼の容姿を愛嬌あるものへと変化させた。
その言葉だけ残し、少年は名も名乗らずその場を去って行った。
――あ……結局、お礼、言えなかったわ……。
清志郎とは違う、低くやや掠れたような男らしい声。
遠ざかる彼の背中を見送りながら、あゆらは胸が熱くなるのを感じていた。
清志郎の暴挙を見た時とは、正反対の感情が湧き立った。
再び静寂が訪れると、金髪の彼は三人がすっかり伸びていることを確認した後、ラフなジーンズのポケットに手を入れ、無言で踵を返した。
目と口を丸く開いたままのあゆらは、それを見て我に返ると懸命に声を上げた。
「あ、あのっ……!」
せめて助けてくれたお礼を言わなければと口を開いたものの、驚きと興奮のせいでうまく言葉が出なかった。
すると彼は振り返り、あゆらを見た。
糸のような細いつり目に、高い鼻、横に幅広い口。美形とは言えなかったが、どこか雰囲気のある個性的な顔つきをしていた。
「別嬪さんがこんな暗い場所一人で歩いてたら危ないやろ、気をつけや」
ついさっきまで鬼のような力を披露していたとは思えない、軽快な口調と気さくな笑顔。
そのギャップは、彼の容姿を愛嬌あるものへと変化させた。
その言葉だけ残し、少年は名も名乗らずその場を去って行った。
――あ……結局、お礼、言えなかったわ……。
清志郎とは違う、低くやや掠れたような男らしい声。
遠ざかる彼の背中を見送りながら、あゆらは胸が熱くなるのを感じていた。
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