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「なぁんて、冗談だよ。本気にしないで」
「ちゅ……チュウゥ……」
「そもそも僕たち猫がネズミを追いかけ回していたからね。多少恨まれても仕方ないよ」
ネズミに騙されてから猫が仇にするようになったとの噂もあるが、実際は猫が先だったらしい。
牛坐さんの腰辺りから顔を覗かせた子々子ちゃんは、猫宮さんの毒がない笑みにホッとしたようだった。
「素晴らしい威嚇。痺れるぞ」
牛坐さんは子々子ちゃんを庇うどころか、猫宮さんのギャップに惚れ直していた。
そしてどこからか手にした着物を、猫宮さんの前に差し出した。
「どうだ、お前に似合いの生地だろう」
「よくも飽きもせず、そんなに持ってくるものだね」
ずいと着物を薦める牛坐さんに、ため息混じりに答える猫宮さん。
会話の流れから常習化していることがわかる。そういえば以前、閉店時にここに飛んだ時、猫宮さんはいつもの作務衣姿ではなかった。粋な布地でこしらえた着物は、牛坐さんからの贈り物と考えれば腑に落ちる。
「はあっ、てめえ、なにぬけがけしてやがんだ!」
猫宮さん労いの場で、先陣を切った牛坐さんに、飛びかかる勢いで繁寅さんが文句を放った。
どうやら繁寅さんは自分が作った料理を一番に食べてほしかったらしい。
すり鉢に入ったデカ盛りラーメンをワゴンから掴み上げ、豪快に猫宮さんの前に置いた。
海苔の黒とラーメンの黄色が、虎の縞模様に見える。油ギッシュなスープにはうさぎの形をしたカマボコが浮いていた。
「ちゅ……チュウゥ……」
「そもそも僕たち猫がネズミを追いかけ回していたからね。多少恨まれても仕方ないよ」
ネズミに騙されてから猫が仇にするようになったとの噂もあるが、実際は猫が先だったらしい。
牛坐さんの腰辺りから顔を覗かせた子々子ちゃんは、猫宮さんの毒がない笑みにホッとしたようだった。
「素晴らしい威嚇。痺れるぞ」
牛坐さんは子々子ちゃんを庇うどころか、猫宮さんのギャップに惚れ直していた。
そしてどこからか手にした着物を、猫宮さんの前に差し出した。
「どうだ、お前に似合いの生地だろう」
「よくも飽きもせず、そんなに持ってくるものだね」
ずいと着物を薦める牛坐さんに、ため息混じりに答える猫宮さん。
会話の流れから常習化していることがわかる。そういえば以前、閉店時にここに飛んだ時、猫宮さんはいつもの作務衣姿ではなかった。粋な布地でこしらえた着物は、牛坐さんからの贈り物と考えれば腑に落ちる。
「はあっ、てめえ、なにぬけがけしてやがんだ!」
猫宮さん労いの場で、先陣を切った牛坐さんに、飛びかかる勢いで繁寅さんが文句を放った。
どうやら繁寅さんは自分が作った料理を一番に食べてほしかったらしい。
すり鉢に入ったデカ盛りラーメンをワゴンから掴み上げ、豪快に猫宮さんの前に置いた。
海苔の黒とラーメンの黄色が、虎の縞模様に見える。油ギッシュなスープにはうさぎの形をしたカマボコが浮いていた。
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