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お礼
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私の言葉が途切れるとともに、沈黙が流れる。深く頭を下げたまま静止していると、不意に次の一歩へ進むきっかけが訪れた。
「僕、いいと思うよ」
ポツリと投げかけられた、幼さの残るほのかに低い声。
そっと引かれるように頭を持ち上げると、私のすぐそばのカウンター席に座っていた少年と目が合った。
七、八歳だろうか、小学生低学年くらいの彼と、その隣には幼稚園年少くらいの女の子がいた。
少年の奥の席にいる彼女は、テーブルの方に身体を乗り出し、無垢な瞳に私を映している。
「メイちゃんもいいと思う。してもらったことはちゃんとお返ししなきゃダメだもん。ね、お兄ちゃん?」
ぷっくりしたほっぺにはまだ赤ちゃんらしさすら感じるというのに、驚くほど饒舌だ。
女の子とはこんなに大人っぽいものだろうか。子育てをしたことがないのでわからない。
妹の物言いに「うんうん」と微笑みながら相槌を打つ兄。
そんな微笑ましいやり取りに混じり、他の客たちの声もちらほら聞こえ出した。
「そうだなぁ、確かに猫宮くんにはいつもよくしてもらってばかりだから」
「こんな小さな子もわかってるんだもの、お礼はしないとねぇ」
前から、奥から、カウンター席にテーブル席から、少しずつ増え始めた同調の声は、やがて一つの大きな賛成となる。
老若男女問わず、慕われている猫宮さんだからこそ得られたまとまりだ。
そうと決まればあとは、もてなして……もてなしてもてなしてもてなしまくるのみ。
「僕、いいと思うよ」
ポツリと投げかけられた、幼さの残るほのかに低い声。
そっと引かれるように頭を持ち上げると、私のすぐそばのカウンター席に座っていた少年と目が合った。
七、八歳だろうか、小学生低学年くらいの彼と、その隣には幼稚園年少くらいの女の子がいた。
少年の奥の席にいる彼女は、テーブルの方に身体を乗り出し、無垢な瞳に私を映している。
「メイちゃんもいいと思う。してもらったことはちゃんとお返ししなきゃダメだもん。ね、お兄ちゃん?」
ぷっくりしたほっぺにはまだ赤ちゃんらしさすら感じるというのに、驚くほど饒舌だ。
女の子とはこんなに大人っぽいものだろうか。子育てをしたことがないのでわからない。
妹の物言いに「うんうん」と微笑みながら相槌を打つ兄。
そんな微笑ましいやり取りに混じり、他の客たちの声もちらほら聞こえ出した。
「そうだなぁ、確かに猫宮くんにはいつもよくしてもらってばかりだから」
「こんな小さな子もわかってるんだもの、お礼はしないとねぇ」
前から、奥から、カウンター席にテーブル席から、少しずつ増え始めた同調の声は、やがて一つの大きな賛成となる。
老若男女問わず、慕われている猫宮さんだからこそ得られたまとまりだ。
そうと決まればあとは、もてなして……もてなしてもてなしてもてなしまくるのみ。
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