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お礼
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「いいけどね、ちづちゃんが幸せなら……」
「本当にそう思っているのか?」
いつの間にか猫宮さんの前まで近づいた牛坐さんが、挑発するように問いかけた。
猫宮さんは自身よりやや背の高い彼を、少し驚きながらも真っ直ぐに見上げていた。
牛坐さんは含みを持っている。
なにか彼なりの考えがあるのだろう。
――が、その真意がわからない私には、軽く喧嘩を売っているようにしか見えない。
急足でカウンター前に駆け寄った私は、牛坐さんの二の腕を叩いた。
「ちょっと、牛坐さん、なんで今日に限って突っかかるんですか」
「……これも猫宮のためだ」
牛坐さんのつぶやきに首を傾げる間も無く、背後から数多の気配が押し寄せる。
私が合図をしてから入るように、と言ったのに、我慢できなかったらしい。
「うおぉーい、猫宮! 俺様も来てやったぜてめえの労いの――」
「もうっ、繁ちゃんったら、それは千鶴ちゃんから言ってもらわなきゃでしょ!」
入店するなりカラクリを暴露しようとする繁寅さんの口を、卯瑠香さんが慌てて両手で塞いだ。
パチンとウインクする彼女に「がんばって」と言われたみたいで、私はすぐ前にいる猫宮さんに視線を送る。
ゾロゾロとやって来た干支メンバーに、猫宮さんは目尻がキュンと上がった瞳で瞬きを繰り返した。
「ど、どうしたのみんな揃って……犬斗と門木が一緒にいるなんて珍しいし、瓜坊や秀馬まで」
全員ではないけれど、ここまでたくさんの十二支たちが集まることに、猫宮さんは何事かと戸惑っていた。
「本当にそう思っているのか?」
いつの間にか猫宮さんの前まで近づいた牛坐さんが、挑発するように問いかけた。
猫宮さんは自身よりやや背の高い彼を、少し驚きながらも真っ直ぐに見上げていた。
牛坐さんは含みを持っている。
なにか彼なりの考えがあるのだろう。
――が、その真意がわからない私には、軽く喧嘩を売っているようにしか見えない。
急足でカウンター前に駆け寄った私は、牛坐さんの二の腕を叩いた。
「ちょっと、牛坐さん、なんで今日に限って突っかかるんですか」
「……これも猫宮のためだ」
牛坐さんのつぶやきに首を傾げる間も無く、背後から数多の気配が押し寄せる。
私が合図をしてから入るように、と言ったのに、我慢できなかったらしい。
「うおぉーい、猫宮! 俺様も来てやったぜてめえの労いの――」
「もうっ、繁ちゃんったら、それは千鶴ちゃんから言ってもらわなきゃでしょ!」
入店するなりカラクリを暴露しようとする繁寅さんの口を、卯瑠香さんが慌てて両手で塞いだ。
パチンとウインクする彼女に「がんばって」と言われたみたいで、私はすぐ前にいる猫宮さんに視線を送る。
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「ど、どうしたのみんな揃って……犬斗と門木が一緒にいるなんて珍しいし、瓜坊や秀馬まで」
全員ではないけれど、ここまでたくさんの十二支たちが集まることに、猫宮さんは何事かと戸惑っていた。
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