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お礼

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 終始てんやわんやであっという間に時は過ぎ。罪深い料理店の営業時間に。
 猫宮さんに会うのは久しぶりだ。
 真昼間に入り込んで以来、数えるほどしか行っていない。
 私のこと、覚えているかな、とか。
 急に驚かせて迷惑じゃないかな、とか。
 考えればキリがないけれど、今は一人じゃない。
 集まった干支たちが少なからずも私に力を貸してくれる。
 あのお店に行きたい――もとい、猫宮さんに会いたい。
 そう願えば暗闇の中、ポツリと浮かび上がるほの明るい建物。
 優しくも眩い光に導かれるように、扉の前に立つ。
 すっかり慣れたはずの来店の動作だけれど、今日は一番緊張している。
 ゆっくりと和の引き戸に手を添え、ふぅ、と一息ついてから静かに開く。
 ――リーーン。
 心地よく鼓膜を振動させる涼やかな音。
 それは私の右手首の飾りか、来客を知らせる合図か、はたまた……。

「いらっしゃいま――」

 こちらを振り向いた彼の、耳に揺れる鈴だったかもしれない。
 猫宮さんは私を見て固まった。
 けれどそれは一瞬で、すぐに焦ったように言葉を直す。

「あ、ち、ちづちゃん、こんばんはっ……」

 夜を示す挨拶のお迎えだなんて、思わず自分が客であることを忘れそうになる。
 ここがもし、人間の世界で、周りに誰もいない、二人だけの空間だったなら。
 そんな考えがよぎった私は、相当彼に参っている。
 一週間ほど会っていないだけなのに、猫宮さん以外の人は目に入らないほど。
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