163 / 206
お礼
22
しおりを挟む
「僕は音楽には詳しいが、料理には精通していない」
「そんな固く考えないで、一緒に作ってみる? 秀ちゃんもニンジン好きでしょ?」
ダイニングテーブルに並べられた食材を前に思い悩む秀馬さんに、卯瑠香さんが声をかけた。
秀馬さんは真顔のままだが、嫌がる素振りもなく誘いに応じる。
草食同士、気が合うのだろうか。
卯瑠香さんが猫宮さんのお店に他の人と来ていた説があったけれど、もしやそのお相手って――。
私がそんなことを考えているうちに、繁寅さんが噛みつかんばかりの勢いで秀馬さんを威嚇していた。
その光景を見た牛坐さんが鼻で笑う。
「くだらない争いをしていないで、さっさと各自料理にかかれ。猫宮に振る舞うのは今夜なのだぞ」
正論を述べる牛坐さんにぐりんと顔ごと視線をくれる寅年。三白眼が完璧にガンを飛ばしている。
「てめえらは焼売と餃子でも作りやがれ、この家畜コンビ!」
それはつまり、秀馬だけにシュウマイで、牛坐だけにギョウザ……ということか。
なるほど、名前に中華らしい共通点が。
と感心している場合ではない。
ニンジンを手に取り眺めていた秀馬さんも、スープの煮込み途中の牛坐さんもこれには黙っていなかった。
「君のような筋肉バカに言われたくない」
「我らの知力、今こそ見せつける時」
「んだと、やんのかコラァ!!」
馬、牛、虎が激突する……姿が一瞬映った。
当然目の錯覚だ。
一人暮らしの部屋に大人数が集まり、ただでさえ窮屈なのに暑苦しさがオーバーヒートする。
「いい加減にしなさーーーーい!!」
恋をすると人は成長すると聞いたことがあるけれど、あれは本当かもしれない。
最初あんなに怖がっていた猛獣にも怒鳴れるくらい強くなった。
こんな好き勝手なメンバーたちで、果たしてまともな品が出来上がるのだろうか――。
「そんな固く考えないで、一緒に作ってみる? 秀ちゃんもニンジン好きでしょ?」
ダイニングテーブルに並べられた食材を前に思い悩む秀馬さんに、卯瑠香さんが声をかけた。
秀馬さんは真顔のままだが、嫌がる素振りもなく誘いに応じる。
草食同士、気が合うのだろうか。
卯瑠香さんが猫宮さんのお店に他の人と来ていた説があったけれど、もしやそのお相手って――。
私がそんなことを考えているうちに、繁寅さんが噛みつかんばかりの勢いで秀馬さんを威嚇していた。
その光景を見た牛坐さんが鼻で笑う。
「くだらない争いをしていないで、さっさと各自料理にかかれ。猫宮に振る舞うのは今夜なのだぞ」
正論を述べる牛坐さんにぐりんと顔ごと視線をくれる寅年。三白眼が完璧にガンを飛ばしている。
「てめえらは焼売と餃子でも作りやがれ、この家畜コンビ!」
それはつまり、秀馬だけにシュウマイで、牛坐だけにギョウザ……ということか。
なるほど、名前に中華らしい共通点が。
と感心している場合ではない。
ニンジンを手に取り眺めていた秀馬さんも、スープの煮込み途中の牛坐さんもこれには黙っていなかった。
「君のような筋肉バカに言われたくない」
「我らの知力、今こそ見せつける時」
「んだと、やんのかコラァ!!」
馬、牛、虎が激突する……姿が一瞬映った。
当然目の錯覚だ。
一人暮らしの部屋に大人数が集まり、ただでさえ窮屈なのに暑苦しさがオーバーヒートする。
「いい加減にしなさーーーーい!!」
恋をすると人は成長すると聞いたことがあるけれど、あれは本当かもしれない。
最初あんなに怖がっていた猛獣にも怒鳴れるくらい強くなった。
こんな好き勝手なメンバーたちで、果たしてまともな品が出来上がるのだろうか――。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
薔薇の耽血(バラのたんけつ)
碧野葉菜
キャラ文芸
ある朝、萌木穏花は薔薇を吐いた——。
不治の奇病、“棘病(いばらびょう)”。
その病の進行を食い止める方法は、吸血族に血を吸い取ってもらうこと。
クラスメイトに淡い恋心を抱きながらも、冷徹な吸血族、黒川美汪の言いなりになる日々。
その病を、完治させる手段とは?
(どうして私、こんなことしなきゃ、生きられないの)
狂おしく求める美汪の真意と、棘病と吸血族にまつわる闇の歴史とは…?
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。
真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~
椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」
仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。
料亭『吉浪』に働いて六年。
挫折し、料理を作れなくなってしまった――
結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。
祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて――
初出:2024.5.10~
※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。

職業、種付けおじさん
gulu
キャラ文芸
遺伝子治療や改造が当たり前になった世界。
誰もが整った外見となり、病気に少しだけ強く体も丈夫になった。
だがそんな世界の裏側には、遺伝子改造によって誕生した怪物が存在していた。
人権もなく、悪人を法の外から裁く種付けおじさんである。
明日の命すら保障されない彼らは、それでもこの世界で懸命に生きている。
※小説家になろう、カクヨムでも連載中
いたずら妖狐の目付け役 ~京都もふもふあやかし譚
ススキ荻経
キャラ文芸
【京都×動物妖怪のお仕事小説!】
「目付け役」――。それは、平時から妖怪が悪さをしないように見張る役目を任された者たちのことである。
しかし、妖狐を専門とする目付け役「狐番」の京都担当は、なんとサボりの常習犯だった!?
京の平和を全力で守ろうとする新米陰陽師の賀茂紬は、ひねくれものの狐番の手を(半ば強引に)借り、今日も動物妖怪たちが引き起こすトラブルを解決するために奔走する!
これは京都に潜むもふもふなあやかしたちの物語。
第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる