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お礼

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 きっと、こんな彼のことも、猫宮さんは励ましもてなしてくれたのだろう。
 十二支だって感情がある生き物なのだ。
 悩みがあってもおかしくないし、優しくしてくれた相手に恩を持つ。その点では私たち人間と、なんら変わりないかもしれない。

「門木くん、そういじけてないで、いいもの作って猫宮さんを驚かせましょう」

 ダイニングテーブルに材料を置き、振り向きながら声をかけた。
 様子を窺うようにこちらを見る彼に、瓜坊くんが寄り添って一緒に立ち上がる。
 
「猫宮さんを労う会なので、今日だけは過去のことは流してみんなでがんばりましょう!」
「ほう、千鶴、やる気だな」
「当たり前ですよ、ようやく猫宮さんにお礼ができるんですから」

 我が物顔でキッチンを占領する牛坐さんは、すでに鍋で煮込み料理をこさえている。
 猫宮さんが人間の世界に来られないなら、こちらから行ってしまえばいい。
 店を連れてくことはできないけれど、料理を運ぶことなら可能だろう。
 そんなわけで、私の家にみんなで集まり食事を作ることになったのだ。
 牛坐さん曰く、猫宮さんは魚が好き。
 だけど皆同じものを作ってはつまらないから、それぞれ好きにすればいい。
 ――とのことで……要するに各自自由に調理する話になった。
 野菜や肉、魚に果物、調味料にスパイスなど、スーパーにある品物は大抵揃えた。
 
「いいものを、持っていますネ」

 完全に存在を消していた白鳥さんが、不意につぶやいて周囲の注目を集めた。
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