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お礼

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 私用で連絡するのはいかがなものかと思いつつも、かの有名旅館に私の名前とともに言付けの電話を入れた。
 するとすぐに牛坐さんから直接電話があり、会う流れになったのだ。

「すみません、お忙しいところ、お呼びたてしてしまって」
「かまわん。猫宮のことならいくらでも時間を割くぞ」

 白鳥さんがうちに来た、一連の流れは事前に伝えた。
 思った通り、猫宮さんにどこまでも友好的な牛坐さんにホッとしていると、白い着物の肩からひょっこり覗くものがあった。

「どこに行くのかと思えば、千鶴に会いに来たんでちか」

 三つ編みと同じ銀色の瞳がじっと私を見据えている。
 平な皿状の耳を隠した、浅黒い肌の幼児姿をした子年。
 そうだ、彼らはニコイチだった。

「子々子に黙って行くのはやめてほしいでち」
「お前は言っても言わなくても勝手についてくるだろう」
「当然でち、子々子は牛坐のお嫁さんでちから。いつでもどこでも一緒なんでち!」

 ため息混じりに返す牛坐さんに、子々子ちゃんはさらっと告白を織り交ぜる。
 ――え? そうなの? この二人って……。

「勘違いするな、子々子が勝手に言っているだけだ」
「あ……そう、なんですね?」
「今はまだ! 片思いなだけでち!」

 牛坐さんの広い肩に小さな両手でしがみつきながら、プンスカ怒る子々子ちゃん。
 十二支の女性陣は、思い込みと情熱が激しい傾向にあるのだろうか。
 旅館で働いているのも、猫宮さんの店に行くのも、すべては牛坐さんと一緒にいるためのようだ。
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