猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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「猫様って、猫宮さんのことですか?」
「はい、そうでス……」

 猫宮さんの名前を出すと、白鳥さんは口元に片手を添え、頬を染めた。
 急に乙女モードに突入した彼女に、嫌な予感がしてくる。

「……ワタシ、猫様をお慕いしていて」

 こちらから問いかける前に、自己申告で教えてくれた。
 ――そう、なんだ。
 そうなんだ……?
 猫宮さんの姿を思い浮かべながら、彼女の台詞を噛み砕く。
 老若男女問わず人気のある彼だ、女性に好かれてもなにもおかしくない。
 おかしくはないけれど、なぜわざわざそれを私に伝えに来たのか?
 ズビズビと鼻を啜り、潤んだ目元を拭うと、白鳥さんは再度私を見つめた。

「……でも、ワタシは猫様に嫌われていまス。なのに、どうしてワタシと似ているあなたには優しいのかと、気になりましテ」

 こちらこそ気になる部分が多々あるが、とりあえず一番引っかかった箇所を取り上げる。

「あの……似てるって、私とあなたが、ですか?」
「はい」
「……どの辺が?」
「髪が黒くて、細身で背が高い、名前に鳥が入っているところモ」

 うふふ、となぜか嬉しそうに口角を上げる彼女。
 以前の私なら「冗談じゃない!」なんて平気で言っていたかもしれないけれど、相手の気持ちを考える今、顔を引き攣らせながらも耐えた。

「そ、そうですか……で、嫌われているのはどうして?」
 
 ゴホン、と一つ咳払いをし、改めて会話を進めると、白鳥さんの口からとんでもないことが飛び出す。
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